〝暑さに強い〟農作物 産地づくり活発に 品種開発、技術普及急ぐ
田植え、種まきを遅らせて高温回避
温暖化が進む中でも農作物を安定生産しようと、暑さに強い産地づくりに向けた動きが活発化している。作型や品種構成、防除方法の見直しなど、抜本的な対策を進める産地も出ている。国も、気候変動を踏まえた品種開発や対策技術の普及を急ぐ。 宮城県が今月に決めた2024年産米の方針では、田植え時期を例年より1週間以上遅らせ、5月下旬に設定した。出穂時の高温が主因となる白未熟粒の発生を抑えるためだ。移植を遅らせることで出穂期も8月中旬と1週間ほど後ろ倒しにし、高温に当たるのを回避する狙いだ。 関東最大の小麦産地・埼玉県熊谷市でも、本年産小麦で初めて、播種(はしゅ)時期を5日遅らせる技術情報を県が発出した。暖冬傾向が続く中、従来通りの播種では分けつが過剰に進み、減収が懸念されるためだ。県農業技術研究センターは「暖冬年が増える中、適正な播種の時期・量を見直す必要性が高まっている」と話す。
定時・定量・定品質 害虫対策も
気候変動の中でも、契約栽培では定時・定量・定品質の出荷が求められる。加工・業務用キャベツの契約栽培に取り組む愛知県のJA豊橋キャベツ部会「てつコン倶楽部(くらぶ)」は、「出荷先への〝欠品なし〟を当たり前にしている」(加藤正人会長)。各部会員が出荷期間の10月から4月に、暖冬と寒波を想定した作型をそれぞれ、作付けの半々程度導入して実現する。 冬春トマトの一大産地・熊本県の八代地域では、高温少雨で発生しやすい害虫・タバココナジラミの対策として、集落ごとに「作業部会」を設置。6月下旬~8月中旬の休作厳守や圃場(ほじょう)周辺の除草を、JAへの非出荷者も含め農家共同で徹底し、同害虫の増殖、被害を減らしている。同JAは「異常気象が日常化する中、地域一体となった対策が重要だ」と強調する。 農水省は2030年までに必要な温暖化への対応策を盛り込んだ「気候変動適応計画」を定めている。水稲では高温耐性品種を26年度までに主食用米作付面積の18%(22年度で12・8%)に高める目標を掲げる。果樹では高温下でも着色しやすい系統の導入などを掲げる他、侵入雑草の被害を軽減する技術開発なども進めるとする。(川崎勇、丸山紀子)
日本農業新聞