東京都知事選での小池氏3選と国政への影響
7月7日に投開票が行われた東京都知事選挙で、現職の小池百合子氏が3回目の当選を果たした。小池氏は291万8,015票を獲得した。 今回の選挙は、自民・公明が支援する小池氏と立民、共産両党が支援する元参院議員の蓮舫氏が争う、与野党対立の構図と見られていた。しかし実際には、既存政党に距離を置く前広島県安芸高田市長の石丸氏が165万8,363票を得て2位、蓮舫氏は128万3,262票で3位となった。 無党派層と若年層の票が小池、蓮舫両氏から石丸氏に流れ、同氏は予想以上の得票となった。小池氏は令和2年の前回都知事選では約366万票を獲得しており、今回はそれと比べると票を減らしている。 支援する小池氏が勝利を収めたことで、自民党は安堵しているだろうが、小池氏の勝利は小池氏の知事としての安定感や実績が評価されたものであり、与党の支持を必ずしも反映するものではないと多くの人は考えるだろう。また、自民党もそのように認識しているものと考えられる。 候補者個人への評価が反映されやすい知事選と比べて、各党の支持をより反映すると考えられているのが、同時に行われた9選挙区での都議補選だ。自民党は、そのうち候補者を擁立した8選挙区で2勝6敗と惨敗した。 このことは、政治資金問題を巡る自民党への逆風が引き続き強いことを裏付けている。自民党内では、次期衆院選に備えて、支持率が低迷する岸田首相を9月の総裁選挙で交代させることを模索する動きが続くだろう。他方、岸田首相のみならず、自民党全体への国民からの支持率が大きく低下している中、首相交代よりも自民党の立て直しを優先させる動きもあるだろう。 都議会選を終えて、国政の注目は9月の自民党総裁選に移っている。知名度の高かった蓮舫氏が3位に沈んだことから、立民も、共産党との連携の是非も含め、今後の選挙戦略の練り直しを迫られるだろう。石丸氏の予想外の躍進は、与野党ともに、無党派層、若年層の取り込みが次の国政選挙に向けた喫緊の課題になったと認識しているだろう。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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