36年ぶり党大会から読み解けるもの 北朝鮮の今後の路線は?
36年ぶりに開かれた北朝鮮の労働党大会。金正恩氏が「党委員長」に就任したことや、スーツ姿で登場したことが注目を集めました。こうしたことから何が読み解けるのか。注目すべきポイントは何なのか。「祖父」「路線変更」をキーワードとして、「コリアレポート」編集長の辺真一氏に寄稿してもらいました。 【写真】北朝鮮「金政権」三代の指導者それぞれの肩書は?
労働党創建時の祖父の肩書と関係か
北朝鮮の労働党大会は36年ぶりに開催されたことで世界の関心を集めました。とりわけ、今後を占ううえで金正恩新体制の人事や外交、核問題への言及が注目されました。 人事では最高幹部からなる政治局員の大幅な刷新が注目されましたが、序列No.2の金永南最高人民会議常任委員長(88)を筆頭にNo.3の黄炳誓軍総政治局長(76)、No.4位の朴奉柱総理(76)ら長老らは不動で、世代交代はありませんでした。急激な若返りで党内に軋轢が生じれば体制不安に繋がりかねないと自重したのかもしれません。 意外なのは、金正恩第一書記を「党の最高水位に推戴する」として、職責を党委員長に変えたことです。第一書記に就任したのは、父親の金正日総書記が死去した翌年の2012年4月の党代表者会の場でした。当時は「金正恩同志を我が党の水位に奉りたてた」として「最高水位」とはなっていませんでした。しかし、党大会前の4月11日に開かれた第一書記推戴4周年慶祝大会での黄炳誓軍総政治局長の演説では、「金正恩第一書記を党の最高水位に戴いたことで」と触れられており、第一書記が「党の最高水位」となっていました。 党委員長も党第一書記も「党の最高水位」には変わりはないのに委員長という敬称にこだわったのは、1949年に北朝鮮労働党と南朝鮮(韓国)労働党が統合し、朝鮮労働党が創建された時の祖父(金日成主席)の肩書が党委員長だったことと関係しているようです。 労働党は1966年に党中央指導機関が改編されて、委員長のポストが廃止され、総書記に取って代わりました。北朝鮮は「金日成イコール金正恩」のイメージ戦略に基づき党委員長のポストを67年ぶりに復活させたようです。後継者としての正当性をアピールするには父(金正日総書記)よりも、人民に絶大な人気のあった祖父を模倣することが得策と考えたようです。いずれにせよ、これにより国家主席及び党総書記同様に党委員長も金正恩氏に万一のことがあった場合「永遠の委員長」として永久欠番となることでしょう。