【宮崎祐樹連載#31】心に刺さる言葉をくれた平野恵一先輩は野球の伝道師
【宮崎祐樹連載 オリのゴリBsを知り過ぎた男(31)】2019年10月にオリックスから戦力外通告を受け、トライアウトも受験しましたが、僕は引退することになりました。そこから現職でもある保険業界に進むことになるのですが、そこに至るまでにはさまざまな経緯がありました。 中でも僕が入団2年目だった12年オフ、FAで阪神からオリックスに復帰された平野恵一さんには、本当にお世話になりました。恵一さんには今現在の基盤となっている、アスリートが持っているべきお金の知識も教えてもらいました。もちろん、野球での心構えや取り組み方など教わったことは多岐にわたります。 恵一さんは24年から台湾プロ野球・CPBLの中信兄弟で監督をされています。就任1年目の今季は球団新記録となるシーズン70勝を挙げ、台湾シリーズも制して日本人4人目のCPBL優勝監督となられました。本当におめでとうございます。 恵一さんはブルーウェーブ時代のオリックスからバファローズを通じ、内外野をこなせる選手としてプレーされた大先輩です。ただ、07年にトレードで阪神に移籍されていたので、入団時に一緒にプレーする機会はありませんでした。 僕がドラフトされた10年シーズンでは阪神で打率3割5分という、とんでもない数字を残されています。これは青木宣親さんに次いでセ・リーグ2位の記録でした。 さらには球団新記録のシーズン59犠打も決め、二塁手としてベストナイン、ゴールデン・グラブ賞にも輝きました。入団して間もない僕からすれば、エグい経験値の先輩です。ところどころで心に刺さる言葉を投げかけてくださる、野球の伝道師のような人でした。 「そんなに焦っていいことあるか?」「そんなに力んでいいことあんのか?」「何であそこであんなプレーをした?」。落ち着いてプレーできていれば、チームに貢献できていた場面などでボソッとアドバイスを送ってくれました。 例えば走者が一、二塁の場面で僕がボール球を振らされ、空振り三振に倒れてベンチに戻ってきた時には、こう言われました。 「お前は若いな。あの場面で投手が最もやられたら嫌なことは何? それはお前にヒットを打たれるという結果じゃないの。ボール球に手を出してもらえないことが一番嫌なんだよ。それをお前はボール球を追いかけて空振り三振やん。あの打席でお前はボール球に2球、手を出してる。見逃すことができていたらフォアボールやん。場面は満塁やん。ピッチャー困るやん」 結果論と言う人もいるかもしれません。しかし、そういうことまで頭に入れて打席に入っていれば「あんなに力まなくて済むし、結果も変わってくる」ということを僕に伝えてくれたんです。相手の状況を把握すると、おのずと持ち球の球種から狙い球を絞りやすくなる効果も生まれます。 一般社会でも同じですよね。自分だけ必死になって結果を出そうと前のめりになってもうまくいかない。周りが見えて、相手が求めることを理解して、こちらが提案できる手段を選択できれば結果も変わってきます。
宮崎祐樹