「究極の個人情報を垂れ流している…」ノーベル賞科学者・山中伸弥が警告する誰も知らない「罠」
「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第13回 『「ネットに繋げると攻撃される…」ノーベル賞科学者・山中伸弥が語る、恐ろしすぎる日本の危機”』より続く
遺伝子検査の罠
羽生 個人のプライバシー保護とセキュリティーについて、まだ世の中に認識が十分行き渡っているとは言えません。 山中 遺伝子検査をしている会社など、日本でも多くの民間企業がそうした個人に関わる膨大なデータを蓄積しているわけでしょう。検査に要する費用も安くなって、みんな手軽に遺伝子検査をしているけれども、実は究極の個人情報を売り渡しているわけです。 羽生 そうですね。むしろお金を支払って与えています。 山中 アメリカのIT企業が、個人のゲノム情報を保存したり解析したりするサービスをしていますね。性善説に立ちたいですけれども、一歩間違えたら大変なことになります。正直に言って心配なところがあります。
グーグルも関与しているゲノム情報
羽生 本当に難しい話だと思います。個人情報の保護は必要だけれども、保護し過ぎると、競争に負けてしまうかもしれない。そうすると、ある程度認めていかなければいけないということになります。 山中 グーグルも「23andMe」(トゥエンティスリー・アンド・ミー)という個人向け遺伝子解析サービス会社に多額の投資をしています。彼らが本当に遺伝子の情報を正しく使うかどうかとなると、やっぱり少し心配になってしまいますね。23andMeは、自分の民族的な背景というか、自分の先祖がどこの出身かも調べることができるんですよ。 羽生 それは興味を持つでしょうね。 山中 検査をしている人同士で、親戚に実は誰と誰がいるとわかるわけです。僕の友人は、母親が日本人で父親は白人ですが、遺伝子を調べたら、「50パーセント・ジャパニーズ」と出た。当たり前のことなんですが、とても喜んでいましたね。 『 いま日本に必要な「アインシュタイン型の天才」・・・永世七冠・羽生善治も困惑する、「藤井世代」の衝撃の実態』 に続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/羽生 善治