山口乃々華の楽しみ方「なんだかんだ一生懸命生きることが好きみたい」
伝えたい想いがあるとき、人は手紙を書きたくなる。女優の山口乃々華さんが、“あのひと”に向けて今の気持ちをしたためる連載。今回は、空の上から海の中の生き物へメッセージ。【連載「〒ののポスト」】
海を自由に泳ぐ魚さんへ
私、この前海外へ行くために飛行機に乗って、あなたが住む大きな青い海を空から眺めていました。太陽の光が水面をキラキラと輝かせていく様子がなんだかとても美しくて、雨上がりの水たまりに似ていました。それから、風が吹くと水面は細かく波立ちザラザラして見えます。海の上で眠れるわけないのだけれど、麻生地のシーツみたいで、なんか気持ちよさそうだよなぁ、なんて。そんなことを思っていたら飛行機はふわっと雲の中へ。 もしも私が魚だったら、どんなふうに生きてみたいかな…。 眠たい気持ちと起きていたい気持ちを行ったり来たりしながら、自分が魚になった姿を想像していました。 どんどんと泳いでいくような元気のある魚になれたのなら、どれだけ楽しいでしょう。いつまでもいつまでも海が続いて、ここは温かいところ、ここは冷たいところ。とかを思うくらいで、未来のことを考えたり、悩んだりもしない。ただ気楽に、ずっと元気にスイスイとひたすら泳いでいく。たまに、あそこのご飯が美味しかったな、と思い出したり、おっと、大きな珊瑚だ!と見惚れてみたり、ちょっと寂しくなったら、よっ!一緒に泳ぐかい?と新しく友達をつくったりしながら、過ごしたい。なにからも急かされず、追われず、楽しんで生きられたらなぁ。 なーんて。 そんな楽に生きられる世界じゃあないのよ? 馬鹿にしないでちょうだい!とあなたは思うかもしれませんね。でもこれはただの、ちょっと疲れ気味な私の想像ですから。許してくださいな。だって、せっかく魚として生きるなら、泳ぎたいじゃないですか。恐れも知らずにスイスイと世界中の海を渡りまくりたいのです。そんなふうにして魚生をおくりたいのです。 まぁ人間界でも楽に生きようと思えば、そうできるのかもしれないけれど、なかなかその選択はできません。それに私はなんだかんだ一生懸命生きることが好きみたいで、何かあればいっぱい考えて、いっぱい悩んでしまう。そのうえ止めたり、放り出したり、諦めたりしないことを選んでは、たまにキャパオーバーしていますが、それもなんだかんだ楽しいです。 願望として思い描くものと、結局自分が選んでいる好きなものは違うのですね。 海にいるあなたにこのお手紙が届くのかわかりませんが、もし読んだら、あなたがなりたい生き物を教えてください。どんな生き物に願望を重ねていますか? 人間よ。と言ったりして! ふふふ。どうかな。ちがうかな。 それでは、いつか会える日までお元気で。 人間界から、山口乃々華より