「原発の町」富岡町が避難解除 町に少しずつ増える“ぬくもり”と決意の火
住宅地を東へ約10分歩くと、JR富岡駅です。海岸から約300メートルと近い富岡駅は「三重複合災害」の象徴でした。(当時の記事) 津波で駅舎は基礎しか残らず、駅東側にびっしりあった住宅群は破壊されました。駅トイレ近くにも遺体が流れ着いたといいます。震災後、駅の脇に小さな慰霊碑が置かれ、訪れた人が手を合わせていました。
現在、駅を北に約100メートル移設する工事が進みます。今年10月ごろ、富岡駅以南のJR常磐線が再開し、上野駅と直結予定です。 ロータリーはすでに完成し、慰霊碑はモール近くにある冒頭の岡内東児童公園に移りました。駅東側には2年前、除染廃棄物の黒い袋が広大に積みあがっていました。現在、処理が進んでいますが、町北部などにはその廃棄物が残されています。
火祭りと桜が「町の誇り」
「町の誇り」といえるイベントに「麓山の火祭り」と「夜ノ森の桜」があります。
町北西部・麓山神社の「麓山の火祭り」は400年近くの伝統を誇り、火のついた松明を担いで山道を登ります。昨年9月、神社に新たな碑が建ちました。「除染と修復工事は困難を極めたが、復興への強い思いと町民の結束で修復した」。町民は祭りの復活を待ちわびています。 町北東部は放射線量がいまだ高く、桜並木で有名な夜ノ森地区などは避難が続く帰還困難区域です。「境界」にはバリケードが一軒一軒にある一方で、道路を隔てた反対側の住宅群にはなく、4月から住み始めることができます。(当時の記事)
夜ノ森の桜は、町民の「心の象徴」です。毎春「桜まつり」が開かれ、よさこい踊りも桜並木で行われました。新ショッピングモールも、桜にちなんだ名称です。 6年経った今も、バリケードで「分断」される光景は変わりません。そんな中、夜ノ森の桜並木の7年ぶりライトアップが1日から16日間行われ、幻想的な光景となります。