被災地で願う、五輪アスリートの活躍。能登、福島から、ゆかりの選手に届けエール
パリ五輪が開幕し、17日間の熱戦が始まった。「五輪で頑張ってくれれば、苦しんでいる被災者も嫌なことを忘れることができる」。そうエールを送るのは、バスケットボール女子の赤穂ひまわり(25)が家族と通う石川県七尾市のすし店の大将だ。店は元日の能登半島地震で損害を受けた。地域はまだ、日常を取り戻せていない。 【写真】重機を操縦するラグビー元代表・五郎丸歩さん 中田英寿さんらアスリート約20人が講習会に参加、災害被災地の支援に備え
五輪でのアスリートの活躍は、これまで多くの被災者を勇気づけてきた。能登半島や福島といったゆかりの地から、アスリートに思いを託す人々に話を聞いた。(共同通信=帯向琢磨、浅田佳奈子、黒田隆太) ▽【七尾】初来店は「母親のおなかの中」 今年1月の地震で大きな被害が出た七尾市。すし店「繁寿し」の大将、増田将広さん(38)は地震の瞬間、店の奥の倉庫で作業していた。翌日に予約が入っていた出前の準備があったからだ。「つぶれるんじゃないか」と思うほどの揺れ。けがはなかったが、断水によって1カ月以上の休業を余儀なくされた。市場に出回る魚介の種類が少なく、しばらくはできる範囲でのやりくりが続いた。 繁寿しは、赤穂一家の行きつけだ。赤穂の両親はバスケ選手。きょうだいも4人のうち赤穂を含む3人が国内トップリーグに所属する。一家は先代の頃からの常連で、赤穂が初めて「店に来た」のは母親のおなかの中にいる時だった。例年、オフシーズンに地元へ戻った時は家族と足を運ぶ。アジなど好物の光り物をほおばるのを楽しみにしているという。
地震は2月の世界最終予選直前だった。赤穂は両親から「こっちは大丈夫だからプレーに集中して」と伝えられた。主力としてチームに貢献し、見事出場を決めた。 シーズン中は食あたりなどの懸念から生魚を控えるという赤穂。今年はパリ五輪もあり、まだ店に姿を見せていない。それでも、増田さんと客は「ひまわりちゃん」の話題で盛り上がる。「五輪でも活躍できるかな」。客の期待は増している。 6月26日に石川県内の復興イベントに駆け付けた赤穂は、「いい結果が皆さんの耳に届くぐらいの活躍ができるように頑張りたい」と決意を語った。 ▽【輪島】朗報を待つ「競歩の聖地」 数多くの競歩の名選手を生んだ石川県は「競歩王国」と呼ばれる。中でも輪島市は「聖地」とされる。その理由は三つある。 一つは、世界で活躍した選手が輪島の子どもたちに競歩を教え、市民に広く愛される競技である事。もう一つは、パリ五輪に出場する池田向希(25)や川野将虎(25)ら、日本代表が合宿をしてきた場所である事。そして、約50年近く日本選手権が開かれてきた事だ。