日銀がETF新規購入の完全停止を検討、正常化開始で-関係者
(ブルームバーグ): 日本銀行は2%物価目標の実現が見通せ、政策正常化に踏み出す段階で、2010年以来続けてきた上場投資信託(ETF)の新規買い入れの完全停止を検討する。複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、株式相場が史上最高値圏で推移する中、ETFの買い入れによってリスクプレミアムに働き掛けることで、株価を支える必要性は乏しいと日銀は判断している。
同様に正常化局面で検討するイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の撤廃もしくは見直しに際して日銀は、国債買い入れの継続などによって長期金利の急変動を回避する方針だと関係者は指摘した。株式市場とは対照的な対応と言える。
日銀によるETF買い入れは昨年は3回、計2100億円にとどまり、今年は実施されていない。11日の東証株価指数(TOPIX)は、市場が目安とみていた2%以上の下落となったが、購入は見送られた。日経平均株価が史上最高値を更新し、日銀が日本株の最大の保有主体となっている中で、さらなる買い入れは投資家から疑問視される可能性が大きい。
関係者によると、市場はすでに日銀がETF買い入れに慎重になっていることに慣れている可能性があるとみている。
ETF買い入れについて植田和男総裁は、現在の大規模金融緩和の見直しが可能な状況になった段階で「他の手段も含めて継続することが良いかどうかを検討する」と2月の国会答弁で発言。内田真一副総裁は2月の講演で、不動産投資信託(JーREIT)を含めて「大規模緩和を修正する時には、この買い入れもやめるのが自然だ」と発言していた。
ETFとJーREITの買い入れは、白川方明元総裁が2010年に導入した「包括的な金融緩和政策」の一環として始まった。主要中央銀行でETFを購入しているのは日銀のみだ。黒田東彦前総裁による異次元緩和の下で増額が繰り返され、現在の買い入れ方針はETFが年間約12兆円、J-REITは約1800億円をそれぞれ上限に「必要に応じて買い入れを行う」としている。