脱「コシヒカリ」?「にじのきらめき」急拡大 猛暑でも大丈夫、味も同等のコメ 弱点は寒さだが…標高が高い地域も注目
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)が2018年に開発した暑さに強いコメ「にじのきらめき」の栽培が、全国で急拡大している。同品種は昨夏の酷暑でも高温への耐性を示したが、逆に寒さに弱く、信州の標高が高い地域では不向きとされる。それでも地球温暖化を受け、県内でもじわりと栽培面積が増加。普及を推進する「奨励品種」に県が指定するかどうか、農家の注目が集まっている。 【写真】夏からの高温少雨で生育不良となった稲穂
■暑さに強く収量15%増 倒れにくく病害にも強い
農研機構によると、にじのきらめきは鹿児島県が育成した「西南136号」(なつほのか)と、農研機構開発の「北陸223号」を掛け合わせて開発。コシヒカリより暑さに強く、高温障害で米粒が白っぽくなる「白未熟粒」が出にくい。加えて、同じ肥料の条件であれば収量が15%程度多い。草丈が25センチほど短いため倒れにくく、いもち病などの病害にも強いとされる。食味は「コシヒカリ並み」とされている。
■2023年産の栽培面積は2020年産の40倍
20年から本格栽培が始まり、3月27日時点で茨城、群馬、山梨、静岡、和歌山、佐賀の6県が「奨励品種」に指定済み。農産物検査法の検査に基づき、産地と品種を表示できる「産地品種銘柄」には同日時点で6県を含む16県が指定されている。23年産の栽培面積は、農研機構の推定で少なくとも5千ヘクタールで、20年産の40倍以上に。県別では茨城が少なくとも1800ヘクタール余りで最大で、新潟が800ヘクタール余りで続く。
■寒さに弱く標高の高い場所は不向きだが…
長野県農政部によると、県内の栽培面積は16ヘクタール程度だが、南信や北信などで徐々に拡大。全農県本部を中心とする「長野米生産販売対策協議会」が国に産地品種銘柄の指定を要望し、24年産から実現する。昨夏は信州も猛暑だったことから、全農県本部は「県内も標高の低い栽培地では暑さの影響があり、にじのきらめきへの期待は大きい」(米穀課)とする。
ただ農研機構によると、にじのきらめきは寒さに弱い。県内では佐久、諏訪地域などの標高の高い場所では不向きという。