脱「コシヒカリ」?「にじのきらめき」急拡大 猛暑でも大丈夫、味も同等のコメ 弱点は寒さだが…標高が高い地域も注目
■普及を進める品種への指定 長野県が判断へ
県農政部は、22年度ににじのきらめきの試験栽培を始め、24年度は試験ほ場を前年度より4カ所増やし9カ所にする。3年間の栽培データを踏まえ、奨励品種にするかどうか判断する方針だ。同時に、暑さに強い独自品種の開発を進める。
■長野県はコシヒカリが8割、1等米比率は全国2位
公益社団法人・米穀安定供給確保支援機構(東京)の推計では、長野県で作付けされた2022年産のうるち米(醸造用米、餅米を除く)は、コシヒカリが約8割。23年産では、猛暑で全国的に等級が下がる中、長野県は1等米比率が91・2%(12月時点)で都道府県別で全国2位だった。それでも温暖化への危機感は高まり、生産者からは「にじのきらめきを奨励品種に」との声が出ている。
■温暖化で「コシヒカリ」から「にじのきらめき」へ?
22年産の全国の作付けで最多だったのはコシヒカリで、全体に占める割合は3割超。ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまちが各1割弱で続く。農研機構中日本研究センターの梶亮太・作物開発グループ長補佐(55)=茅野市出身=は、温暖化で今後はコシヒカリが減り「にじのきらめきがカバーする可能性がある」と見通す。
■猛暑の2023年は1等米比率が大幅低下
猛暑だった23年、新潟県などは暑さのため1等米比率が大幅に低下した。長野県は高水準を維持したが、県内の栽培地は標高300~千メートル程度まで幅広い。北信や南信などでは「白未熟粒」などが発生した。
■温暖化の脅威 標高450メートルでも「コシヒカリが白っぽく」
菅沼ライス(下伊那郡松川町)代表の菅沼晃さん(46)は、標高450メートルほどの場所にある約10ヘクタールの水田のうち、23年には約3ヘクタールでにじのきらめきを栽培した。栽培は3年目だった。「23年はコシヒカリで白っぽくなるものが多かったが、にじのきらめきはほとんどなく、暑さをものともしなかった」とする。
収穫米の大半を独自販売しており、「コシヒカリは名前が通っていて売りやすい」とするが、「暑さで等級が下がれば元も子もない」と話す。
進行する温暖化は脅威。菅沼さんは「暑さに強い長野県のオリジナル品種が欲しい」という。コシヒカリを栽培する農家が温暖化を理由に生産意欲を失わないか懸念し、まずはにじのきらめきを県が奨励品種に指定することを望んだ。(須田充登)