マリナーズ岩隈が勝てる理由は心理戦
岩隈は言う。 「無駄なフォアボールを出さないことは考えてますよ。ボール球を投げずに。でももちろん、わざとボールも投げてます。それは振ってくるだろう、というカウントで投げて、あえて振らせているというか、バッターの特徴とかを考えて」。 思い出したシーンがあった。7月7日のツインズ戦のこと。1点リードの七回表、マウンド上の岩隈は2本のヒットで2死二、三塁のピンチを迎えていた。そこで打席に入ったサム・フルドに対し、2-2からの6球目、仕留めにいった低めのスプリットを見送られ、フルカウントになった。 ここでどう攻めるか。興味深く見ていると、岩隈は6球目と全く同じ球ーー同じ高さから、同じスプリットを地面すれすれに落とし、三振を奪っている。岩隈は試合後、「フォアボールでも良かった」と振り返ったが、今回改めて聞くと、彼は言っている。 「まあ、あれは、確かにフォアボールでも良かったんですけど、3-2カウントなら、バッターは手を出しやすくなる。それを考えて、あそこに投げました」 2-2と3-2では、打者心理が変わってくる。フルカウントなら、投手はストライクゾーンに投げてくるだろう、との意識が働く。岩隈はそれを利用し、振るだろうというところにボール球を正確に投げたのだった。裏にはさらに、「その前の振り方を見て、振ってくるだろう」との考えもあったというから、確信があってのことでもあった。 ちなみにこのとき、「そう言えば、2-2からスプリット投げてボールになったけど、次に同じスプリットを投げて、三振に取ったことがあったよね?」と聞いただけ。会話の流れの中で思い出したことなので、対戦チームも、いつだったかもはっきり覚えていなかったが、「ああ、あれは・・」。それだけで岩隈に通じた。彼は、過去の対戦のことをかなり詳しく覚えている。それがあるからこそ、この打者は、ここに投げれば打ち取れる、というイメージが出来るに違いない。 さて、そんなピッチング術に加え、岩隈は、球そのものにも手応えを感じている。「真っすぐがちょっと違うのかもしれない。90マイルぐらいでもファールを取れるから。ファール取れれば、それでOKというか、カウントが進むし、その中でスプリットを混ぜて、他の変化球も利用しているので、その変化球でカウントがとれれば、ゲームプラン通りに進む」。