体操界に次々と出てきた10代メダル候補
内村航平(コナミ)の史上初7連覇という偉業で幕を閉じた体操の全日本個人総合選手権。世界選手権の2次選考会を兼ねたこの大会では、負傷を抱えながらも王座を守ったエースの強さがあらためて称えられる一方で、7位以内に5人の大学生が入るなど、多くの若手の台頭が見られた。すでにロンドン五輪団体と昨年の世界選手権の個人総合で銀メダルを手にしている加藤凌平(順大3年)や、昨年の世界選手権種目別ゆかで金メダルに輝いている白井健三(神奈川・岸根高3年)に続く、新たなパワーが伸びてきたのだ。 筆頭は、今回の全日本で2位になり、体操関係者をして「やっと来てくれた」と胸をなで下ろさせた野々村笙吾(順大3年)だ。予選で内村と0・550点差の90・350点をマークして2位に付けると、決勝ではあん馬の落下が痛かったものの、それでも89・200点で内村に続く2位。玄人受けする美しく安定した演技を披露し、昨年の世界選手権銀メダリストである加藤凌平(順大3年)を上回り、準優勝を果たした。2日間の合計点を優勝した内村と比較すると、その差は1・650点。これは昨年の5・550点差と比べて大幅な接近だ。 野々村は、「僕は万全の状態で臨んだが、内村さんはけがをしていて、技の難度も下げていた。だが、それでも差があった。やはりまだ遠いと感じる」とさばさばした口調で言いながらも、「2日間でミスが1つ、そしてこの順位(2位)。全体的には良かったと思っている」と安堵の表情を浮かべた。野々村は千葉県出身の20歳。不得意種目がなく、技の出来映えを示すE得点の高い、まさにこれぞオールラウンダーという選手で、市立船橋高校時代から「内村の次の個人総合チャンピオンは野々村で間違いなし」と関係者が一様に口をそろえるほどの逸材だった。しかし、大学進学後はけがに悩まされることが多く、ロンドン五輪代表選考会では5位。昨年の世界選手権代表選考会を兼ねたNHK杯では内村、加藤に続く3位。その間に同い年の加藤が五輪と世界選手権でメダルを獲得した。 今回は満を持しての2位躍進。内村は、加藤との距離に加え、野々村との距離も縮まっていることを認め、「最終的に上にいく選手とは精神面が本当に強い選手であり、そういう選手の集まりが日本代表になってくる。凌平も笙吾も、難しい技をやるとか点数が高いとかではなく、精神面がかなり強くなった。どんな状況でもブレない演技をする。元々良い体操をしていたが、それに強い精神面が加わり、僕にとっては厄介な存在になった」と高く評価した。