元脳外科医が認知症になって知った「発症して失われる力」と、それでも変わらない「大切なもの」
「人格が変わる」は大ウソ
話がとぶようですが、「アルツハイマー病になると人格が変わる」と、言われるようです。でも私には、〈ちょっとちがう〉という実感がありました。 確かに晋には、空間認知や記憶の面で支障が出ています。そのせいで、できないことが増えたのは、ここまで長々と書いてきたとおり。 しかしそれは、生活の「技術」の問題にすぎないのではないか? 支障が出て困るから、人柄が変わったように見える、そういうことではないでしょうか。 だから、人間性が壊れるわけではないと思うのです。 むしろ、かえって深まるものもあるのではないか――。 たとえば晋の場合は、正義感、優しさ、謙虚さ。そして信仰も深まったように、私は感じていました。 『かつて誰よりも恐れた認知症を「発症してしまった元脳外科医」...彼が「仲間」に向けて発したメッセージの裏にある、家族だけが知る「葛藤」』へ続く
若井 克子