【伝説のライブ50年】活気と熱量を次代に(5月29日)
郡山市の開成山公園で伝説の野外ライブ「ワンステップ・フェスティバル」が開かれてから、今夏で50周年となる。地方の若者が企画した一大イベントに、オノ・ヨーコさんら著名アーティストが出演し、全国から約7万人ものファンが集まった。市内の有志が今秋、復活イベントを開催しようと動いている。資金面などの課題はあるが、「楽都郡山」に若者の活気を生む取り組みとして注目したい。 国内最大規模のロックコンサートとして1974(昭和49)年8月、5日間にわたって催された。市内の実業家佐藤三郎さんが米国の音楽祭典「ウッドストック」に触発され、商店会の仲間と一緒に4年がかりで準備した。ロック歌手の内田裕也さんらがプロデューサーを務めたことで大がかりとなり、国内外の30組を超えるアーティストが交通費や宿泊費などの実費以外は無報酬で出演を引き受けた。今なら、市民主体の地方創生の試みと言えるだろう。 イベントは郡山市制施行50周年の記念事業と銘打たれ、市も当初は協力的だった。ただ、当時はまだロックの世界を特別視する風潮もあったようだ。保護者の声を受け市教委が生徒の参加を禁止する中で決行された経緯がある。
曲折もあったフェスティバルに、半世紀を経て光が当たり始めている。オノ・ヨーコさんのライブ音源が2年前にCD化された。今年6月1、2日には「ワンステップ」に着想を得た「大楽都祭」が開成山公園で計画されている。 有志による復活イベントは10月に開成山公園で開催され、当時の出演バンドの一部が登場する予定という。50年前に裏方で関わった郡山文化協会理事の七海晧奘[こうそう]さんは、復活イベントを通じて「夢を追い求める若者のほとばしるような熱量が今の世代に少しでも伝われば」と願う。 音楽都市・郡山は、全国トップ水準の合唱の街で名をはせる。ロックの聖地としても浸透すれば、発信力やブランド力が高まるはずだ。 主宰した佐藤さんは8年前に亡くなるなど、往時を知る人は少なくなった。伝説のライブを記憶にとどめるモニュメントがあってもいいのではないか。佐藤さんらは楽都のロック音楽の開拓者であり、チャレンジ精神を受け継ぐ価値はある。(浦山文夫)