『ライオン・キング:ムファサ』鈍い出足 「ディズニー復活の年」の最後に異変?
12月第4週の動員ランキングは、『はたらく細胞』が週末3日間の動員は38万6000人、興収は5億3200万円をあげて2週連続1位となった。公開から10日間の累計動員は128万3900人、累計興収は17億5800万円。 2位も前週に続いて『モアナと伝説の海2』。週末3日間の動員は27万2000人、興収は3億6600万円を記録。公開から17日間の累計動員は177万5600人、累計興収は24億1700万円。正月映画としてはまだ『グランメゾン・パリ』などの公開も控えているが、ひとまず年内は『はたらく細胞』と『モアナと伝説の海2』の2作品が冬休み興行を牽引していくことになりそうだ。 【写真】『ライオン・キング:ムファサ』で声優に初挑戦したTravis Japanの松田元太(撮り下ろしカット) 週末の興収では公開3週目の同じディズニー配給作品『モアナと伝説の海2』をわずかに上回ったものの、思いのほか渋いスタートとなったのが3位に初登場した『ライオン・キング:ムファサ』だ。オープニング3日間の動員は24万7000人、興収は3億6700万円。この成績は、同じくフルCG作品として製作されて最終興収66.7億円を記録した2019年8月公開の『ライオン・キング』の初動成績のちょうど半分の成績。もっとも、北米ではさらに極端な結果が出ていて、なんと今回の『ライオン・キング:ムファサ』のオープニング成績は2019年の『ライオン・キング』比で18%と大低迷している。 『アイアンマン』シリーズで知られるジョン・ファヴローが監督を務めていた前作から一転、今作『ライオン・キング:ムファサ』の監督を務めているのは『ムーンライト』でアカデミー賞作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス。ただ、だからといって作風が大きく変わっているわけではなく、観客の世代を選ばないエンターテインメント性も前作に引けをとっている部分はない。作品評価も「前作を超えている」とする批評家も多い。だとしたら、どうしてこんな結果になったのか? 指摘されているのは、前作の公開時には大きな話題となったフルCGによる『ライオン・キング』の世界の映像表現が、5年経って新鮮味がなくなってしまったということ。また、前作の単純な続編ではなくプリクエル(前日譚)であるということも、客足に影響してしまったのではないかということ。ただ、結果が出てからでは、いくらでも後付けで理由を挙げることはできるだろう。公開前に、ここまでの不振を予想していた声はほとんどなかった。 日本での興行に関していうなら、現在も破られていない年間歴代最高興収を記録した2019年は、空前のディズニー・イヤーでもあったということも大きいだろう。その年の年間トップ10のうち半分の5作品がディズニー配給作品。年間6位となった『ライオン・キング』は、6月に公開されて年間3位となった『アラジン』、7月に公開されて年間4位となった『トイ・ストーリー4』に続いて、追い風に乗るように8月に公開された。一方、今回も『モアナと伝説の海2』が大ヒット公開中という「流れ」はあったわけだが、その2週後の公開というのはちょっと間隔が短すぎたのではないか。あるいは、今年は『インサイド・ヘッド2』と『モアナと伝説の海2』が連続ヒットとなったものの、それはかつてのようなディズニーの無敵のブランド力が復活したわけではなく、あくまでもそれぞれ作品単体の力であったと分析ができるかもしれない。
宇野維正