【全文】くい打ち不正問題(4)横浜の現場は「不都合な不具合」の可能性
旭化成建材がマンションなど建物のくい打ち工事データを改ざんしていた問題で、旭化成は2日午後、都内で会見し、旭化成建材がくい打ちを実施した3040件についての調査の進ちょく状況を公表した。横浜のマンションの現場代理人以外でも複数名によるデータ流用が判明し、社内で流用が横行しているかのような事態に、旭化成の平居正仁副社長は「そういう環境にあったことは認める」と、教育やチェック管理体制に問題があったの認識を示した。
横浜のマンションは危険な不具合との認識なのか?
日経アーキテクチュア:日経アーキテクチュアのタカイチと申します。1点確認させていただいた上で質問に移らせてください。横浜のマンションの杭は全数調査したんでしょうか。未達かどうか全数調査したんでしょうか。 平居:全数調査とおっしゃってるのは、800本全部って意味ですか。 日経アーキテクチュア:横浜のマンション。そうです。横浜のマンションの杭。 平居:横浜のマンションの杭の全数調査という話は、もともとないと思いますんで、私たちが。 日経アーキテクチュア:していない? 平居:ちょっと待ってくださいね。元請けさんと協力して安全性の確認をしっかり進めていくというふうに、従来から言われておりますので、それについてはしっかりやっていきますが、1本1本の調査というふうには聞いていない。 日経アーキテクチュア:分かりました。そうしますと、少なくとも未達の杭があったということは、三井住友建設が手配した杭に、支持層まで届かない杭があったということは間違いないと思うんですね。次に現場代理人の方が、支持層に全部届いたと確認していたと認識しているわけですよね。つまり、ほかにも、つまりデータが転用されていない杭で到達していないものがある可能性は十分あるということですね。 平居:それは全ての仕事において起こりうると思います。 日経アーキテクチュア:いや、そういうことを申しているんではなくて、今回の場合、2つの事実が明らかです。1つは、未達になった杭が少なくとも、根入れ不足を含めて8本ある。それはデータ流用があったものから明らかになったわけですね。で、少なくとも三井住友建設が手配した杭の中に、支持層に届かないものがある。これは間違いわけです。 もう1つ、現場代理人の方が支持層に届いたと、全ての杭が支持層に届いたと認識しているわけですよね。すると、データ流用していない杭でも未達のものがある可能性は、極めて高いんじゃないでしょうか。 平居:極めて高いとは思いません。極めて高いとは思いません。それは、支持層のボーリングデータと、の入れた。 日経アーキテクチュア:極めてじゃないけれども高い。 平居:入れた杭との長さは分かっておりますから、今回のこのケースについて言えば、ボーリングデータが。 日経アーキテクチュア:いや、でもボーリング調査に基づいて杭の長さを決めたんですよね。それが届いていないものが6本、根入れ不足が2本あることは明らかですよね。 平居:いや、そこはそうと思っていないところがございます。要するに。 日経アーキテクチュア:そうとは。なるほど。御社はそうだとは限らないと認識しているわけですね。 平居:そうです。 日経アーキテクチュア:分かりました。 平居:だからそれが誤認であるというふうに思っていると。 日経アーキテクチュア:分かりました。もう1つは、私どもが把握しているのは、マンション1棟について、西棟1棟について54メートルに対して2センチ、水平目地のずれがあったことと、手すりの2センチのずれがあったということですよね。これは御社は、先ほどおっしゃっていた危険な不具合と認識していますでしょうか。 平居:まだ第三者機関さんによる鑑定結果が出ていないと伺っておりますが、1,000分の0.5の勾配で構造クラックその他が多数出ているという状態ではありませんので、少なくとも危険な状態であれば、今、あの建物は強制退去させられているはずです。市役所、建築指導課等から。で、今そうなっていないというのは、直ちに危険がある建物ではないというふうに。 日経アーキテクチュア:いえ、直ちにかどうかを伺っているのではなくて、御社が今、3,040件で危険な、構造クラックがあるような危険な不具合の報告は受けたことがないとおっしゃってますですよね。 平居:はい、はい。横浜の物件は別ですよ。今、そういう。 日経アーキテクチュア:じゃあ、横浜のは危険な不具合だと認識してるんですか。 平居:横浜に起こってる不具合は認識しています。不具合が起こってる、2センチ落ちてるという、その不具合が起こっている。そうですよね。その不具合が起こっているけれど、それが直ちに居住していては危険なほどの不具合かということに関して言えば、そういう認識は私たちはしていないし、あそこの人たちもしていないからこそ、今、そのまま暮らしていらっしゃる。 日経アーキテクチュア:それはそうです。それはそうだと思います。 平居:そうですよね。 日経アーキテクチュア:私が伺っているのは、御社が他の物件でも危険な不具合と認識する不具合のレベルに、今回の2センチのずれというのは入って、該当するんでしょうか。 平居:今、申し上げたように、危険な不具合っていうのは立ち退きが要求されるような不具合だと思ってますから、現時点であの建物は十分に、十分にという言い方も分からないですね。 日経アーキテクチュア:じゃあ質問を変えますが、今、私の質問に正対した答えをいただいているとは思えないんですけれど、それでは、2センチの不具合が危険なもので、それとデータ転用に因果関係があるために、全額補償ということを御社はおっしゃっているんでしょうか。 平居:いえ。まず、ここは申し上げておきたいんですけれど、データ転用と不具合が本当にストレートに因果関係があるかということについて言えば、私たちはストレートに因果関係があるとは思っていません。データ転用はどこまでいっても、先ほど来、申し上げているように、その大多数と言うべきなのか、なんと言うべきか分かりませんけど、データ転用が行われたのはあくまでも施工報告書の体裁を整えるためであったということが、今までの調査のだいたいの状態であります。 今回の現場につきましては、不具合があったときに、不都合な不具合ですね、届いていないということを知っている……。 日経アーキテクチュア:危険ではなく、不都合な不具合ですね? 平居:そうですね。まずは不都合な不具合。要するに届いてないにもかかわらず、データも取れなかった。だからデータを流用したみたいな形ですね。そういった形のことは、可能性としてはあったかもしれないと思っています。 ただ、今回起こっている、現場において起こっていることは、先ほども申しましたけど、私たちの施工した人間はそこでなんらかの誤認をしたんじゃないかと私たちはまだ思っている。だから、杭の状態を本当に確認させてほしいんです。杭が生きてるか、死んでるか、それが全てなんです。そこをはっきりさせない限り、今の話が食い違うのは、まさにそこが届いてないと思ってらっしゃる。われわれは誤認であって、斜めに入ってるかもしれないし、なんか違うものに刺さってるかもしれないと思ってます。そこを確認したいんです。 日経アーキテクチュア:なるほど。つまり届いている可能性もあるということですね。 平居:もちろんです。 司会:じゃあすいません。ほかのご質問の方も多いんで。じゃあその、あちらの横の方。