父死去、6年前に93歳で…生前「庭のリュウゼツラン咲くまでは生き抜く」と励みにしていた そして今開花、息子夫婦「見せたかった」 するとシラサギが花の上を旋回、名残惜しそうに飛び去る 妻「絶対じいちゃんだ」
「じいちゃんに見せたかった」―。埼玉県さいたま市南区の寺尾秀夫さん(71)、町子さん(70)宅で、数十年に1度しか咲かないという多肉植物「リュウゼツラン(竜舌蘭)」が黄色の花を咲かせ、大空にそびえている。 突然50万円を渡す…青い車の女性、福祉施設に寄付 施設長、急いで女性探すも姿なく「幸せの青い鳥来た」
21年前、市内の別所沼公園でリュウゼツランが咲いたと聞き、秀夫さんの父寿治さん(享年93)と一緒に見に行った町子さんが、硬くトゲトゲした葉っぱを見て「うちにもあるよ、これ」と気付いた。自宅に戻ると、確かにリュウゼツランと思われる植物が庭にあった。以来、寿治さんは「咲くまでは生き抜く」と開花を励みにして過ごしてきた。しかし、その願いはかなわず、寿治さんは6年前帰らぬ人となった。 寺尾さん宅のリュウゼツランは50年ほど前、知人から譲り受けたものだという。「最初は鉢植えでアロエみたいに小さかった。葉っぱのトゲがすごいので、庭に置いておいたら根付いちゃったんだと思う」と秀夫さんは振り返る。 長い間、葉だけをつけていたリュウゼツランは、5~6年前から少しずつ株が大きくなりはじめ、昨春現在の大きさになったという。そして今年5月初旬、中央の茎が伸び出し、一日10センチぐらいずつ伸びて、今では8メートルほどに。
毎日観察していた町子さんは「花が咲いた時、シラサギが低空飛行して2回旋回してフェンスに止まった。そして名残惜しそうにリュウゼツランの上を3回転して飛び立っていったんですよ。絶対じいちゃんだと思う」と話した。 寺尾さん夫婦は、「貴重なリュウゼツランが枯れる姿も楽しみなので見届けたい」と日々見守っている。 ■リュウゼツラン(和名・竜舌蘭) 北米のメキシコや中南米の熱帯地域で自生するリュウゼツラン科の単子葉植物で、数十年をかけ成長したのち、1度だけ花を咲かせ枯れてしまう。竜の舌のような先が鋭い肉厚の大きな葉を持つ。英語名では「100年に1度開花する」という意味でセンチュリー・プラントといわれる。メキシコのハリスコ州テキーラ市では、テキーラの古い産業施設群とテキーラの原料にもなるリュウゼツランの景観が、2006年に世界遺産登録された。