「書店ゼロ自治体」比率、全国5番目…熊本の書店、生き残り模索
人口減少やインターネット通販の普及などを背景に書店の数が減り続けている。今年3月時点の出版文化産業振興財団の調査によると、全国1741市区町村のうち、書店が1店舗もない自治体は482と、全体の約4分の1(27・7%)を占める。熊本県では45市町村のうち「書店ゼロ」の自治体は21で、比率は46・7%。沖縄(56・1%)、長野(53・2%)、奈良(51・3%)、福島(47・5%)に続き、5番目に高い割合となっている。 書店が1店舗あるだけで「無書店予備軍」とも言える市町村を合わせた比率は、熊本県が66・7%。高知(76・5%)、北海道(72・1%)、長野(71・4%)、鳥取(68・4%)、福島(67・8%)に続き、和歌山と並んで6番目に高くなっている。 経済産業省は、書店を地域文化振興の重要拠点と位置づけ、支援に乗り出す考えを示しているが、具体策はこれからだ。 熊本県内では今年1月、小国町で唯一の書店が閉店し、今年6月末には、熊本市中央区新町に1874(明治7)年からある老舗書店「長崎次郎書店」も休業することになった。一方、個性を打ち出した小さな本屋が新たに開業する動きもみられる。街の書店はどうなっていくのか。熊本県内の書店事情を追った。(川﨑浩平、山本遼、澤本麻里子、前田晃志)
厳しさ「マックス」…客との交流が原動力 雑貨で売り上げ維持 熊本県内で最も古い創業150年の長崎次郎書店(熊本市中央区新町)が6月末で休業することを公表した。1月には小国町唯一の書店が閉じ、書店ゼロの県内自治体は21と全体の半数近くに上る。人口減少やインターネット通販の普及、店を維持していくための経費増など書店経営の厳しさは増す一方だ。既存の書店は生き残りを模索する。 小国郷で唯一残っていた小国町の「青柳書店」は1月末、65年の歴史を閉じた。禿[かむろ]善盛社長(63)は「新型コロナの感染拡大が始まって以降、客がめっきり減った。暇だったら本屋に寄るという行動からスマホを見る生活習慣に置き換わるスピードが加速したように思う」と打ち明ける。 一方、阿蘇市で経営する店舗は存続を決断。人口減少もあり売り上げは伸び悩むが、小国郷などの教科書の取り扱いを増やし、利益確保への努力を続けながら、通販とは違う「リアル書店」としての生き残りを図る。「自分たちで考えて作った書棚から本を手に取ってもらえると『やった』という気持ちになる」。本を通じた客との交流が、禿さんの店を営む原動力だ。