駿台出資のatama plus、AI教材で「講師が教えない塾」を100カ所へ
スタートアップのatama plus(アタマプラス、東京・港)は、生徒一人ひとりに適するように作成した個別指導用の人工知能(AI)教材を全国の大手予備校や塾に提供している。同社はこのほど、この教材だけを使い、教室でオンライン授業を進める「atama+(アタマプラス)塾」のフランチャイズ(FC)展開に乗り出すことになった。 【関連画像】アタマプラスだけを使った個別指導塾「まつがく」上田駅前校の学習風景 「実は、3年前から長野県の3カ所で、『THINX(シンクス)』という名称で直営のアタマプラス塾を運営していた。ここで手応えを感じたため、新たな展開に入る。コンセプトに共感してくれる塾経営者にFCとして参加してもらう」とアタマプラスの稲田大輔代表取締役CEO(最高経営責任者)は話す。2017年設立の同社が展開するAI教材の特徴は、定額制で使い放題であること。講師や他の生徒に気兼ねなく、生徒が十分に理解するまで好きなだけ学習することができる。これまで展開していた3カ所のシンクスは、名称をアタマプラス塾に切り替えて継続して運営する。 AIによって個別カリキュラムを組む際、例えば、以下のような手順を踏む。まず、学校で習った範囲で、問題を数問タブレット端末で解いてもらう。ここで正答率が悪かった問題を分析して、関連性が強い学習分野を抽出する。苦手を早期に克服できるよう学習プランを組んで、総合的な学力の底上げにつなげていく。 アタマプラスの教材は、「駿台予備学校」を運営する駿河台学園(東京・千代田)をはじめとする全国の大手予備校や塾の約4000教室に導入されている。これらの教室では、従来型のリアルの授業と、AI教材を並行して利用しているわけだ。 その1つである進学プラザグループ(仙台市)が、21年の2月と6月に行った塾内模試の結果を比較したところ、数学についてアタマプラスの教材で学習した生徒は、すべての学年で偏差値の向上が見られたという。例えば偏差値65以下の生徒の場合、中学校1年で平均2.46ポイント、2年で2.42ポイント、3年で3.65ポイントという具合だった。 ●「グローバルで活躍できる人材を育成したい」 海外進学支援大手のクリムゾン・エデュケーション・ジャパン(東京・台東)の松田悠介代表も、アタマプラス塾のFC展開に加わることを決めた。松田氏は海外進学塾を展開し、世界中の大学などに日本人を送り込んでいる起業家・教育者で、自身も米スタンフォード大学などに2回留学している国際人だ。その経験を基に「グローバルで活躍できる人材を育成したい。そのためには学びの“土台”が必要だ。アタマプラスは塾で一人ひとりの生徒に対して個別対応できる有力なAI教材。コンセプトやモデルに共感した」と語る。 松田氏は「これまでの学校教育は、いわば生産工場で働く人に求められる学力を身に付けさせてきたような面がある。一例を挙げれば、マニュアルを読んで覚えられるような人材の育成だ。しかし今は、コンピューターのプログラミングや英語などまで幅広い能力を身に付けることが求められている。1人の教師では十分な個別対応ができないから、AIの力を借りて多様化を実現することは理にかなっている」と話す。