大阪の地下を貫く巨大トンネル 「寝屋川南部地下河川」の中へ入ってみた
大阪府の寝屋川流域では現在、治水対策の一環として2本の巨大な地下トンネル(地下河川)の整備が行われています。このうちの1本である東大阪市にある「寝屋川南部地下河川」の施設でこのほど行われた見学会に同行し、トンネルの中へ入ってみました。
11月17日午後、近鉄八戸ノ里駅から15分ほど歩くと、地上1階建ての小さな建物が見えてきました。入り口の看板には「寝屋川南部地下河川若江立坑」と記されています。「立坑(たてこう)」とは、流域の外側に雨水を排出して浸水被害を防ぐ「地下河川」を作るための施設です。
施設のある敷地は、西側を第二寝屋川、東側を大阪中央環状線に挟まれています。周囲に住宅や会社の建屋などが立ち並ぶ光景を見ていると、地下に巨大トンネルがあるとはすぐに想像できません。
職員による施設の説明が終わると、建物のドアをくぐって階段を降ります。ほどなくして、周囲をコンクリートで囲われた巨大な縦穴が下の方に現れて、思わず「おおっ」と声が出そうになりました。 配布資料を確認すると、若江立坑の外径は25メートル、内径22メートル、深さ23.3メートルとあります。
底の方には、ポッカリと大きな口を開けた横穴が見えます。地下河川です。 階段を降りきって穴の中をのぞくと、見学用に設置された照明によって円筒型であることがわかります。 穴の内径は6.9メートル。照明が配置された場所よりも奥に目を向けると、光が届かないため何も見えず、地下河川がまっすぐ伸びているのか、それともカーブしているのか全くわかりません。
地下河川の底では、水が緩やかに奥の方へと流れています。幸い、水位はジョギングシューズの靴底よりも低く、水が靴内に染み込む心配はほぼありません。少しホッとして、穴の中を移動しながら幾度もカメラのシャッターを切りました。
完成後、寝屋川南部地下河川の全長は13.4キロメートルとなる計画です。このうち完成済みの11.2キロメートルは、すでに雨水の貯留施設として浸水被害を防ぐ役割を担っています。
府によると、貯水した水は平野立坑から平野川へ、今川立坑から今川へそれぞれポンプで排水しているそうです。 今後、残る区間の工事を進めて、2044年度の地下河川全体の供用開始を目指しているとのことです。 (取材・文:具志堅浩二)