三菱重工East・矢野幸耶主将 「地に足つけて」挑む2大大会連覇 その先に見つめるものとは
今夏の都市対抗優勝チームで第49回社会人野球日本選手権に出場する三菱重工Eastは、3日の1回戦で日本製鉄東海REXと対戦する。主将の矢野幸耶内野手(30)が、今大会にかける意気込みを語った。 「優勝しても地に足を付けようというところから始まった。チャレンジする気持ちは変わりません。1番打者としては出塁率4割を目指してやります」 悲願の初優勝から3カ月。15年の日本生命以来史上4度目となる2大大会の同一年連覇にも期待がかかる。 日本一を狙うことに変わりはないが、その一方で、矢野はチームの未来にも目を向けている。福岡第一、北陸大を経て入社8年目。今季から主将を任されるにあたり、練習中から細かなミスを指摘しあえる雰囲気づくりを徹底した。 「良いプレーに対する声は誰でも出せるけど、悪い時にいかに指摘できるかが大事。先輩に対して遠慮しているようではダメ」 不動の1番打者を務める矢野だけではなく、今夏の橋戸賞を獲得した本間大暉、正捕手の対馬和樹、主砲の小栁卓也、元オリックス、中日の武田健吾らレギュラーには30代が目立つ。チームとしての成熟期。ただ、矢野が「(時間が)限られている野球人生」と表現したように、現在のチームを支えている頼れる面々が、いつまでも先頭に立ってプレーできるわけではない。刹那的な目先の勝利だけにこだわるのではなく、いかにしてチームの伝統、文化を築き上げていくか――。矢野は2つのテーマを追い求めるからこそ、言葉に力を込める。 「今のうちから若い選手が指摘できる環境をつくっておかないと、彼らが年長者になった時にそういうことができないチームになってしまいますから」 率先垂範するだけではなく、若い選手に対しては年長者の細かなミスでもしっかり指摘するよう促した。たとえ守備が苦手な選手だったとしても、目の前で守備のミスが起これば遠慮せず指摘するよう背中を押した。「野球はトータルのスポーツ。自分が守れないから、打てないから、苦手な部分については指摘しません、ではチームが強くならない」。口を酸っぱくして言い続けた矢野の思いは徐々に浸透。比例してチーム力は高まり、今夏の都市対抗2次西関東予選で危なげなくENEOS、東芝を退けると、本戦でも一気に頂点まで上り詰めた。 「もっと良いチームになれる。まだまだ発展途上です」 そう言い切る姿からは、油断や隙と言った部分が見当たらない。日本選手権の最高成績は21年の準優勝。歓喜の夏に続いて、新たな歴史を刻む準備は万端整った。