子どもへの性暴力防ぐ「日本版DBS」 下着窃盗含まず?「この先の課題は多い」
■「職業選択の自由」という壁
国は去年6月に有識者会議を設置、法案化の作業を進めてきた。 制度はイギリスの「DBS(Disclosure and Barring Service)制度(前歴開示・前歴者就業制限機構)」を参考につくられた。 イギリスでは、職種に関わらず雇用主が働く人の犯歴照会を求めることができる。特に、子どもに関わる職種では、子どもに対する性的虐待などの犯罪歴がある人を雇うことは法的に禁止されている。そのため子どもに関わる職種の雇用主は、働く人の犯歴照会を行うことが義務化されている。
一方、日本では「職業選択の自由」を保障する憲法や刑法との兼ね合いから、対象とする職種や犯罪の種類、照会する期間などを絞り込んで法案が作られてきた。照会が義務付けられるのは学校や保育所などで、学習塾やスポーツクラブ、認可外保育所などは任意の認定制とした。
斉藤さんは、被害者となってしまう子どもたちを守るという視点が重要だと指摘する。 「子どもの人権という問題と、加害者の職業選択の自由の部分的な制限を天秤にかけたときに、もちろんそれは子どもの人権を尊重するべきではないでしょうか。加害者臨床では、加害者の加害行為の克服には、被害者にその負担を負わせないというのが原則です。再犯防止のプログラムに参加している加害者の方に聞いても、子どもに接する状況を最小限にとどめる『日本版DBS』はあってしかるべきというのがみなさんの意見です」
■下着窃盗やストーカー 人に対する性暴力とは言えない?
先月の衆議院特別委員会では、付帯決議がつけられた。その中の一つが、対象となる犯罪の種類だ。 こども家庭庁は、不同意わいせつ罪などの刑法犯や痴漢などの条例違反は対象としているものの、下着の窃盗やストーカー規制法違反は含まなかった。この理由について加藤鮎子大臣は国会で次のように説明した。 「対象犯罪は、前科を有する者の事実上の就業制限となることから、児童等の権利を著しく侵害し、その心身に重大な影響を与える犯罪として、人の性的自由を侵害する性犯罪や性暴力等の罪に限定をしている。 これに対して、下着窃盗等については、財産に対する罪の窃盗罪。またストーカー規制法違反については、恋愛感情またはそれを満たされなかったことによる怨恨の感情を従属する目的でつきまといなどを繰り返す罪であり、人に対する性暴力とは言えない」