賃貸物件オーナーが「サブリース契約更新解除」を勝ち取った令和5年の判例…今後の同種事例の指針に【弁護士が解説】
賃貸物件オーナーがしばしば頭を悩ませる「サブリース」契約ですが、令和5年4月、「サブリース契約の更新拒絶」を認めた判決が下されました(東京地裁令和5年4月27日判決)。これは、今後の同種事例の指針のひとつになると考えられます。果たしてどのような内容なのでしょうか。日本橋中央法律事務所の山口明弁護士が法的目線から平易に解説します。 3,000万円30年返済の住宅ローン…金利差による利息分
サブリース契約を解除し、物件を売りたい…オーナーの切実事情
賃貸物件オーナーがサブリース業者に対し、建物または居室を使用収益させ、その対価として賃料を支払う「サブリース契約」。一見利便性が高いしくみですが、オーナーとサブリース業者との間で、しばしば契約内容や費用をめぐるトラブルが発生しています。サブリース会社との契約解除のむずかしさもそのひとつだといえます。 今回、サブリース契約の更新拒絶を争った直近の裁判事例(東京地裁令和5年4月27日判決)では、一定の立退料を支払うことにより、正当事由(借地借家法28条)が認められました。そしてこの判決は、今後の同種事例の指針のひとつになると考えられます。どのような要素が考慮されたのか、具体的に見ていきましょう。 まず、本判決において「原告(賃貸人のこと)」は、下記(1)(2)のような問題を抱えており、その解決策として(3)を取りました。 (1)裁判の対象となった賃貸物件を購入した令和3年2月頃、自宅購入のために住宅ローンの事前審査を受けたところ、この物件購入のためのローン残債務が原因で審査が通らなかった (2)上記の残債務を減らすために本件物件を売却することを計画したが、不動産会社から、本件物件のようにサブリースが付いた収益物件の売却はむずかしく、相当に価格を下げなければ売れないといわれた (3)そのため、本件賃貸借契約を終了させることを希望し、その更新をしない旨の通知をした つまり、原告である賃貸物件オーナーは、該当の物件をできる限り高額で売却しようと考え、サブリース契約を更新しない旨の通知をしました。 これについて裁判所は、下記のように判示しました。 このような事情は、典型的な「建物の賃貸人建物の賃貸人・・・が建物の使用を必要とする事情」(借地借家法28条)とはいい難いものの、これに該当し得る事情とはいえるのであって、他の事情との総合的な考慮により、正当な事由があると認められることもあり得るというべきである。 なお、『一問一答新しい借地借家法』(法務省民事局参事官室編、49頁)にも、「『借地権設定者が土地の使用を必要とする事情』および『借地権者が土地の使用を必要とする事情』においては・・・地主が土地を売却しなければならないという事情も、評価は低くなりますが、これに準じて扱うことはできるでしょう。」という記載があります。