キリンHD、日本製鉄、神戸製鋼所…国内企業は生物多様性の保全にどうコミットしているのか?
キリンHDでは、紅茶農園認証取得支援の経験を活かし、2020年から認証取得支援を行っているベトナムのコーヒー農園でも、今後同様のLEAPアプローチによる分析・評価を行っていくことを考えています。 このように、長年にわたり取り組みがあり、原料生産地ともコミュニケーションを取り合ってアプローチできる調達地域から自然資本のリスクと機会の分析にLEAPアプローチを適用していくことで、他のコモディティでの対応展開の際にもゼロからのスタートではなく、対応方針や評価後の取り組みについて勘所を押さえた状態で臨むことができる有効な手段の1つであるといえます。 ■ 日本製鉄、神戸製鋼所、JFEスチール 副産物である鉄鋼スラグを「自然に還元」し、海の生態系を再生 ■鉄鋼セクターにおけるサステナビリティ課題 近年の鉄鋼セクターにおいては、ネイチャーポジティブに先行するサステナビリティテーマであるカーボンニュートラル対応が喫緊の対応となっています。 経済産業省によると、日本の産業部門別CO2排出量のうち3分の1を製造業が占めており、さらに製造業の中では鉄鋼業が3分の1を占めています。こうした背景の中、「グリーンスチール」化が国内外を問わずセクター全体で進められていると伺えます。 ■副産物を利用した自然の回復に資する取り組み ネイチャーポジティブ関連では、製鉄工程で発生する「副産物」である鉄鋼スラグを活用した、自然の回復に資する取り組みが行われています。鉄は植物の光合成などに必須な微量元素であり、生態系の底辺を支える植物プランクトンの増殖において重要な元素です。 そのため、森林減少による河口からの鉄分流入量の減少は、沿岸域の生物多様性を減少させることが知られています。その結果として、水産業における漁獲量の減少といった問題も顕在化しています。いわゆる「磯焼け」と呼ばれる現象です。