電子部品メーカー、AI需要取り込み急ぐ…「もっと早く対応できなかったのか」(村田製作所社長)
米オープンAIの生成人工知能(AI)「チャットGPT」をはじめとした生成AIの利用が広がる中、電子部品各社はAIサーバーの増設を見込み、需要を取り込むための製品開発を急ぐ。扱うデータの大容量化や伝送速度の高速化に対応した部品のほか、発熱対策に用いる部品など多岐にわたる。ただ、全体のサーバーの出荷台数に占めるAIサーバーの割合はまだ小さい。限られたパイをいかに獲得するかが問われる。(阿部未沙子) 【写真】日本電波工業の水晶発振器 「もっと早く対応できなかったのか。リソースのシフトや研究開発のテーマのシフトが必要だったかもしれない」。村田製作所の中島規巨社長は、新中期経営計画説明会でAIサーバーを含むデータセンター(DC)などの成長市場への向き合い方を振り返る。今後、容量が大きく、かつ小型なコンデンサーなどで市場を取り込む方針だ。 実際、AIをめぐる市場では伸びが期待されている。富士キメラ総研(東京都中央区)が3日に発表した調査では、生成AIの国内市場は2028年度に23年度比12・3倍の1兆7397億円を見込む。中でも、中央演算処理装置(CPU)に加え、画像処理半導体(GPU)を搭載したAI向けのサーバー市場に関しては、28年度に23年度比9・6倍の2600億円と予測。「今後も好調な市場拡大が予想される」(富士キメラ総研)とした。 将来の市場拡大をにらみ、電子部品各社は仕込みを急ぐ。近年、サーバーで大きなデータを扱ったり、データを送る速度を向上したりする必要性が高まる中、DCでの光通信モジュールでは毎秒800ギガビット(ギガは10億)から毎秒1・6テラビット(テラは1兆)への高速規格に移行が進む。 こうした潮流に対応するため、例えば山一電機は毎秒1・6テラビットに対応するコネクターを開発し、発売した。光通信モジュールに接続してサーバーに信号を伝送するのに使う。山一電機の高速伝送技術を生かして開発したという。 また、日本電波工業は光通信モジュール向けの水晶デバイスを開発した。毎秒800ギガビットのほか、毎秒1・6テラビットの速度にも対応する。加藤啓美社長は11月の決算説明会で「AIサーバー本体でも水晶デバイスの需要が急速に拡大する見通し」とし、「AIサーバー向けでも拡販する」と話した。 さらにサーバーの故障を防ぐためには、冷却が必須だ。例えば、ニデックは発熱対策を目的とした水冷モジュールを投入。また日本ケミコンは、液浸冷却方式を採用するDCが増えることを見込み、同冷却方式に対応したアルミ電解コンデンサーを開発した。 ただ、AIサーバーの市場はいまだ拡大途上にある。台湾の調査会社、トレンドフォースによると、24年のサーバー全体の出荷台数に占めるAIサーバーの割合は前年比約3・4ポイント増の12・2%にとどまると予測する。将来の成長市場を取りにいくため、足元では積極的な種まきが求められる。