オーロラは不吉な予兆 ── オーストラリア先住民の伝承を読み解く
*この記事は、現地発の情報プラットフォーム「WorldVoice(2024年5月13日付)」の投稿を一部編集して転載しています。 ●インド洋を覆う光のカーテン、2021年に国際宇宙ステーションから届いた極上写真 太陽活動の活発化に伴い、NASA観測史上において最大規模となる「Xクラス」のフレアが複数回発生。5月10日頃から12日未明にかけて、世界各地でオーロラが観測された。【平野美紀(シドニー在住ジャーナリスト/ライター) オーストラリアでもタスマニアを始め、各地でオーロラが観測され、SNSを賑わせたが、残念ながらシドニー近郊では、雨が降っていて見られない!とぼやく人も多かったようだ。 今回のオーロラは、緯度の低い場所にも出現し、日本でも広範囲で観測されたため、その美しさに魅了された人も多かったと思うが、キレイだと喜んでばかりもいられない。なぜならば、オーストラリア先住民の人々の間では、不吉なことが起こる前兆と言われているからだ。
オーロラの赤い色は「火」「血」「死」
南半球で観測されるオーロラは、「オーロラ・オーストラリス」と呼ばれ、今回のような観測史上最大級と言われるような爆発的な太陽フレアが発生しなくても、タスマニアやビクトリア州南部などの南端に位置する地域では、ときおり観ることができる。 ただ、さほど緯度が高くないため、オーロラ観測で有名な極地に近い都市に比べると、発生率はそれほど高くない。また稀に、十数年または数十年に一度くらいは、キャンベラやシドニー、ウルルあたりでも観測されることがある。こうした自然現象をつぶさに観察し、その現象が及ぼす影響を戒めとして伝えてきたのが、オーストラリアの先住民たちだ。 「オーストラリアの先住民」といっても、250以上の異なる言語を持つグループがあるのだが、オーロラにまつわる伝承を持つどのグループも、オーロラを火、血、死、前兆と関連付けているというのが興味深い。 オーストラリアの上空に出現するオーロラは、赤みを帯びているため、空が赤く染まる様子を見た先住民の人々が、「火」を連想するのは想像に難くない。先住民の人々は、オーロラを「宇宙の火」として見ていたと言うが、なかには、「灰」と関連付けてきたグループもあり、こうした各地の伝承を合わせると、火が起きて灰になるという繋がりが見えてくる。 火が起きて灰になる...という、物事の終わりを意味するのではないか? これが単なる連想ゲームではないことを祈りたいが、何千年もその文化を継承してきた先住民たちが恐れ、天罰が迫っていることを知らせる現象としてきたことを忘れることはできない。