隠蔽スキーム実行か…「架空貸し付け」疑惑、関係者が証言<検証集中審査 長崎・大石知事政治資金問題㊤>
長崎県の大石賢吾知事の政治資金問題などについて、県議会総務委員会は9月30日、10月28~30日の計4日間にわたり、真相究明を図る集中審査を開いた。知事のほか、参考人として後援会の元監査人ら8人が証言。焦点となった「2千万円の架空貸し付け」「286万円の迂回(うかい)献金」の疑惑や知事の「政治姿勢」について検証した。 「2千万円の貸し付けは架空の虚偽です」。10月30日、県議会総務委員会の集中審査。大石氏の後援会関係者として県庁別室からリモートで出席した参考人の女性はこう断言。さらに今年、「架空貸し付け」が問題化することを懸念し、隠蔽(いんぺい)のため収支の帳尻を合わせる「スキーム(枠組み)」が大石氏の了承の下で実行されたと証言した。大石氏は否定した。 女性によると、後援会の2022年政治資金収支報告書を作成するため、23年3月、長崎市内の事務所に顧問税理士と知事選の陣営幹部の3人で集まった。その際、大石氏の選挙コンサルタントから税理士に電話で「2千万円は架空の貸し付けを計上して返済する」と連絡があり、その通りに収支報告書を作成。「(事前に)知事は了承していた」と女性は語った。 集中審査で大石氏はこの経緯を「存じ上げない」と否定。22年5月ごろ、選挙コンサルから知事選費用として借金した2千万円について「後援会への貸し付けにすれば返金される」「法令に抵触しない」と助言を受け、「ありがたいと判断して処理した」と述べ、あくまで「二重計上」の誤りだったとする従来の主張を繰り返した。 大石氏は今年6月28日、自らの承認なく後援会から「多額の出金」がされ、元監査人に渡った可能性があると表明。出金額は463万円とし、詐欺罪の刑事告訴も視野に確認を進めているとしている。女性はこの「多額の出金」と「架空貸し付け」の関係を説明した。 背景にあるのは、大石氏が3月までに後援会から返済金の一部として受け取った計約655万円。大石氏を支援する立場だった元監査人は6月9日のリモート会議で、後援会の収支報告書が公開されて返済が明らかになれば「架空」が問題化すると指摘。大石氏に返済の記載をなくすためのスキームを提案した。 それは(1)後援会が元監査人と業務委託契約を締結した上で元監査人側に463万円を振り込む(2)元監査人は全額を女性の個人口座へ送金(3)女性が現金化して大石氏へ手渡し、持ち金と合わせて最終的に約655万円を後援会に払い戻す-という手法だった。女性は会議翌日に大石氏と元監査人からの電話で、実行されることを確認したという。 女性はこの出金に「私の関与が疑われている」との不信感から証言に及んだ。スキームについて大石氏は「私の了解は事実に反する」と反論した。 女性は大石氏が初当選した22年2月の知事選を裏方で支え、同4月から後援会職員として勤務。秘書や事務を担った。委員から最後に大石氏に言いたいことを問われた女性は、こう答えた。「真実は一つ。うそにうそを重ねることはやめていただきたい。私は本当に尊敬しておりましたし、支えておりました。そういう知事であっていただきたい」 集中審査後、女性は自宅で郵便封筒を受け取った。差出人は「大石賢吾後援会」の代理人弁護士。今月末に女性を解雇する予告通知だった。