韓国・ウクライナ「戦略的意思疎通強化」…殺傷兵器支援につながるか
専門家「尹政権は先を急ぎ過ぎている 今は波紋の最小化に努めるべき時」
韓国とウクライナの戦略的意思疎通の強化が強調された両首脳の29日の電話会談は、北朝鮮とロシアの危険な動きをけん制することを狙った外交的対応に焦点が当てられているが、韓国のウクライナに対する殺傷兵器の支援へとつながる第1段階となることも懸念される。 この日の電話会談は、韓国とウクライナが「戦略的意思疎通」を強化するとともに、情報と専門技術を共有しつつ対応策を調整することで、ロシア戦線に派兵された北朝鮮軍の攻勢的役割をできる限り抑制することに焦点が当てられているとみられる。大統領選挙を目前に控えた米国政府が、北朝鮮の派兵に対して即時かつ具体的な対応を取ることが難しい状況の中で、政府はウクライナおよび欧州の域内機関との協力を緊密にすることに集中している。尹大統領がここ最近、NATO(北大西洋条約機構)、EU(欧州連合)、ウクライナの首脳と相次いで電話会談をおこなっていること、そしてEUのボレル外務・安保政策上級代表が来月4日に訪韓し、チョ・テヨル外交部長官と第1回韓EU戦略対話を開催することも、その一環だ。 当面の関心事は、韓国がウクライナに対する攻撃兵器の支援の段階にまで踏み出すかどうかだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、北朝鮮とロシアの動きによっては「殺傷兵器の支援」も検討すると強調してきており、この日も「戦場の状況を綿密に観察しつつ、実効的な段階的対応措置を取っていく」と述べている。ウクライナやNATOなどは韓国に、経済的、人道的観点からの支援にとどまらず、攻撃兵器の支援を決断することを望んでいる。韓国国防研究院(KIDA)のトゥ・ジンホ国際戦略研究室長は、「攻撃兵器支援カードも切っておいて、北朝鮮とロシアの動きを見ながら対応水準を決める、というのが政府の立場だが、今は『外交の時間』だ」とし、「直ちにロシアの態度を変化させることは難しいとしても、NATO、EU、ウクライナとの『戦略的意思疎通』の強化は合理的な対応」だと述べた。 政府が直ちに兵器支援に乗り出さなくても、ウクライナとの意思疎通のチャンネルが緊密になればなるほど、結局はウクライナの要求に弱くなる、との懸念も強い。世宗研究所のキム・ジョンソプ首席研究委員は、「代表団や特使を交換したり、様々なレベルの対話チャンネルを作ろうとしたりする動きに注目すべきだ」とし、「ゼレンスキー大統領は日を追うごとに兵器支援を強く要求してくるだろうし、意思疎通が本格化するほど要求のレベルが高まる可能性が高い」との見通しを示した。キム首席研究委員は、「今は北朝鮮軍の派兵の波紋を最小化する努力が必要だが、韓国は先を急ぎ過ぎている。朝ロ密着を懸念し批判するのは必要だが、韓国が危険な状況に巻き込まれないよう、警戒を緩めてはならない」と述べた。 実際にゼレンスキー大統領はこの日、「ウクライナ支援のための主要7カ国(G7)ビリニュス宣言への韓国の参加」を要請したという。G7の首脳は昨年7月のNATO首脳会議を機に、リトアニアのビリニュスで、ウクライナに対する長期的な軍事・経済支援を骨子とする共同宣言を発表しているが、韓国もこれに参加してほしいということだ。北朝鮮軍の派兵が、韓国に対するより強力で包括的な支援の要求となって返ってきているわけだ。 もちろん、政府内にも慎重論を展開する人は少なくない。米大統領選やウクライナの戦況などを考慮するとともに、ロシアとの関係がさらに悪化しないよう、精巧かつ慎重にウクライナの状況に対処すべきだというわけだ。問題は、外交安保ラインを現在主導しているのが国家安保室の強硬論者たちだということだ。 パク・ミンヒ先任記者、チャン・ナレ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )