上杉柊平の幸せを保つマイルール「自分にとっての“特別”を探す」
高志が道を違えてしまった理由「親と環境」
“力”の使い方における考え方が南丸と割れ、少しずつ道を踏み外してしまう高志。彼は、なんともやりきれない最後を迎えることになる。その瞬間、彼は何を考えていたのか。上杉にその問いを向けてみる。返ってきた答えは「きっと、彼はすでに覚悟してたと思うんです」。 「彼なりに覚悟を決めたターニングポイントは二つあったと思います。一つは、頼之さんが“力”で大きなビルを吹っ飛ばしたのを、真横で見ていたとき。そしてもう一つは、高志が南丸の家に行って『(妹の)幸子(藤野涼子)に、俺が悪かったって伝えてくれ』と、南丸に伝言を頼むシーン。なんとなく自分の運命を悟っていたからこそ、あんなふうに言ったんじゃないかと思います。きっと仮に、もっと早くに幸子に会えていたとしても、高志は言えなかったんじゃないかな。そういう人なんですよ、高志って。幸子がいなかったからこそ、間接的にでも『謝ろう』と思えたんじゃないかな」 本来は、臆病なところもありながら、優しい性格の持ち主だったことが示唆される高志。途中で道を違えてしまった理由について、上杉は「環境と、親じゃないでしょうか」と言う。 「子どもが変化する要素って、環境と、親を含めた大人たちからの教育、この二つの影響が強いですよね。高志がああいう性格になってしまったのは、一人ひとり個性も考え方も違う子どもに対して、それぞれに合った教育や接し方ができなかった結果なんじゃないでしょうか。閉鎖的な村で、価値観を押し付けられるような家庭環境で、生き方が制限されてしまったのが高志。彼だって、褒められたかったし、愛されたかった。欲しいものを得るためには、“力”を使うしかなかった人なんだと、僕は思います」 『七夕の国』は超常ミステリーだが、安易にジャンル分けできる作品ではない。見方を変えることで、現代を生きる私たちにとっても、さまざまな示唆が得られる。
上杉柊平の悩みとの向き合い方
ずっとわだかまりが残っていた妹の幸子に対し、本音を言えなかった高志。家族や友人、大切な人に対して、思いを伝えられる時間は限られている。そんな、儚い現実を見せつけられる。 「基本的に僕は『不言実行』タイプです。口で言わずに行動で示すほうがカッコいいじゃないですか。もちろん、絶対に伝えなきゃいけないことや、言わなきゃ誤解が生まれそうなことについては、ハッキリ伝えます」 悩みや上手くいかないことがあっても、あまり自分から相談することは稀だという上杉。「誰かに相談しないと決められないようなことは、悩んでも仕方ない」と強い姿勢でいる。 「不安はもちろんありますよ。自分の決断に対して『これでいいのかな』って思う気持ちもあるんですけど、たとえ解決できなくても、やるしかないですから。最終的には自分で決断して、行動するしかない。僕が相談するとしたら、仕事でわからないことがあったときですかね。知識が必要な部分に関しては、すぐマネージャーさんに相談します!」 悩みや不安を、上杉は数学に例える。問題文があり、まず、それに対する答えを書く。そして、解くために使う数式はあとからどんどん変えていく。上手くはまらない数式があれば、辻褄を合わせるために、軽やかに別の数式を当てはめる。 「合う数式がなくても、答えが成立していればOK。解く途中だったとしても、次に行くタイミングだったら次に行っちゃいます」と語る上杉は、どこまでも身軽だ。