センバツ21世紀枠 中国地区補欠の倉吉総合産 春の県大会制覇目指し再起 夏こそ甲子園へ /鳥取
3月18日に開幕する第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)。1月28日の選考委員会で、「21世紀枠」の候補校に推薦された倉吉総合産(倉吉市)は惜しくも中国地区の補欠校にとどまった。それから1カ月。ナインは気持ちを切り替え、「夏こそは甲子園へ」を合言葉に練習に励んでいる。【野原寛史】 ◇悔しさバネに猛練習 ドカ雪から2日が過ぎた2月25日。学校から南東に約2キロ離れた野球部専用グラウンドを訪れると、選手たちは手分けして周辺の除雪ボランティアと練習に汗を流していた。 雪上での走り込みや、大きくて重いボールを使っての体幹トレーニングなどが、この日の主な練習メニューだ。ノックの代わりに、定常弘顕監督(42)の号令で投げられた雪玉を捕るユニークな守備練習も行われた。「鳥取大会決勝、九回裏1点リード、2死二、三塁をイメージしよう。捕れば甲子園だ!」。定常監督の大きな声が飛ぶ。 新型コロナウイルス禍で部活動が平日の2時間に制限されており、自主練習で補う日々が続く。室内練習場がないため、雪や雨の日は土の上で練習ができない。それでも選手たちの表情は明るい。 “吉報”が届かなかった選考委員会の直後を、安達楓真(ふうま)主将(2年)は、こう振り返る。「部員みんなに悔しさや戸惑いがあった」。それでもミーティングを重ね、自分たちの力を冷静に見つめ直した。そして新たな目標を掲げたという。「春の県大会、そして夏の鳥取大会に優勝する。今度こそ甲子園に行くんだ」 定常監督と選手たちは、時々の素直な気持ちをつづった「野球ノート」を交換している。昨秋の中国大会は、県の準優勝校として臨みながら広島の広陵に0―6で完敗した。その後、21世紀枠候補校となったが、選手のノートには「もしも(センバツに)選ばれても全国の強豪と戦えるのか不安だった」と書かれていたという。だが、それまで現実感の薄かった「甲子園」を意識して取り組んだ2カ月半で、選手は日ごろから大舞台や強豪相手の試合を意識して練習できるようになった。安達主将は「野手陣は以前なら諦めていた打球を最後まで追い続けて捕れるようになった」と精神面の成長に胸を張る。 もちろん、筋トレや「食トレ」によって体も一回り大きくなった。定常監督は自信にみなぎる選手たちの姿をうれしそうに見つめながら、「センバツの舞台に立つことを想定して練習に取り組んだ期間は無駄ではなかった」と静かに語った。 ナインは今後も野球の普及や地域貢献活動を続けながら、まずは春の県大会制覇を目指す。県内屈指の投手に成長したエース・伊藤愛希(あいき)投手(2年)だけに頼らないチームづくりが喫緊の課題だ。安達主将は力強く語る。「21世紀枠候補校になり、周囲や地域の方々の協力や応援のありがたさを改めて実感した。最終目標である夏の鳥取大会を勝ち抜いて甲子園に行くことで周囲の皆さんに恩返ししたい」