闘莉王が傷だらけの引退秘話。「ベスト16壁を越えられそうだった日。PKを蹴れずにどれだけ眠れぬ夜を過ごしたか」
不振にあえぐなかで腹をくくった岡田監督が、大会直前に戦い方を180度転換。中村俊輔を中心としたポゼッションスタイルから、堅守速攻型に転じた賭けが奏功したのも、高さと強さ、存在感の大きさを発揮して最終ラインに君臨した、闘莉王と中澤佑二の最強センターバックを抜きには語れない。 特に大会前に開催した選手ミーティングで、歯に衣着せずに「オレたちは下手くそなんだよ。もっと泥臭く戦わないとダメなんだよ」と熱く訴えた闘莉王の檄が、チームを内側から動かした。 「いまは綺麗なサッカーばかりで、そういうところにサッカーが進化していっている。だからこそ泥臭く、多少技術が優れていなくても、僕みたいに一生懸命プレーしてサポーターに喜ばれる姿勢をなくしてほしくないし、そういう気持ちを伝えられる選手が消えていってほしくない」 技術ももちろん大切だが、最後にファンやサポーターの胸へ響くのは気持ちとなる――会見に駆けつけた盟友で、ひと足早く引退した楢崎正剛さんや中澤さんに労を労われた闘莉王は、身体を張って貫き通したポリシーを後輩たちへの熱きメッセージに変えて、近日中に高齢の両親が暮らす母国ブラジルへ凱旋。解説などと並行させながら、当面はかけがえのない時間を最愛の家族と共有していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)