虎のソナタ 神宮の他球場にはない楽しみ バックネット真下の記者席でリアルなグラウンドの音
(セ・リーグ、ヤクルト6-5阪神、11回戦、阪神6勝5敗、30日、神宮)こういう負け方をするチームは、絶対に強くはないと思う。アッという間の大逆転負けだった。 でも、だからといって優勝できないか? といえば、それは分からない。どんなひどい試合をしても1敗は1敗。大逆転負けが2敗になることはない。次の試合は、われらが大エース・才木が先発だ。勝てばチャラだと考えれば、こんな負け、どうってことない(と思うことにしよう)。 決勝打のヤクルト・山田は試合前、誰よりも早くグラウンドに姿を見せて練習していたそう。努力はウソをつかない。敵ながら…だ。 いろいろあるのが、プロ野球。負け方を楽しんだっていいんです。 「そうですよね。神宮球場は、他球場にはない楽しみがあるんですよ」 いつも元気なトラ番最年少・中屋友那は、神宮球場の記者席がお気に入りだ。スタンドの高い位置にある他球場と違って、この球場の記者席はバックネットの真下。選手たちレベルの視線から野球を眺める。ということは、グラウンドの音が、リアルに聞こえてくるのだ。 「記者席の前の窓を開けたら、ベンチの声が結構、耳に入るんです。平田ヘッド、嶋田バッテリーコーチの大声を楽しんでいます」 激励もあれば、ヤジもある。これが意外に新鮮だったりする。ただ、一番聞こえてくるのが、64歳・平田ヘッドと62歳・嶋田コーチというのは、どう受け止めたらいいのか。若いコーチたちは何をしているんや…もっと声を出さんかい! と、これは中屋記者ではなく虎ソナの個人的意見です。 不思議なファンが登場するのも、神宮球場の特性だ。勝っても負けても、選手がグラウンドを歩いて、三塁側の内野スタンドと外野スタンドの間の通路を通って帰路に就く。昔は壮絶なヤジが飛び交い、メガホンが雨アラレと監督や選手に投げつけられた。 令和の時代は、そんな不届き者は姿を消したが、昨日は、七回のヤクルトファンの東京音頭に乗せて、阪神カラーの黄色い傘を振って踊る虎党が出現した。その数30人以上。古参の記者は「ヤクルトの応援に合わせて阪神ファンが踊りまくるなんて、おそらく史上初の事件です」と興奮していた。 この時期ならではの来訪者も現れた。試合前の三塁側クラブハウス(つまり阪神が到着する場所)付近には、東京都知事選のある立候補者がやってきて、語りかけた。といっても、そこにいるのは阪神ファンばかり。