由美かおるの「レオタード」はどう考えてもあり得ない…「昭和の時代劇」に無理やり盛り込まれた「肉体美」のナゾ
NHK大河ドラマでも…
原作にあるエロ要素を忠実に再現した作品もある。1960年代の映画界では市川雷蔵主演の『眠狂四郎』がヒットし、1963年から1969年までに12作が公開された。柴田錬三郎の原作にあったエロ要素が映画化に際しても踏襲され、毎回必ず濡れ場、官能シーンがあり、妖艶な女性の裸身が惜しげもなくスクリーンに映し出された。 『眠狂四郎』は片岡孝夫と田村正和主演のテレビ・シリーズもあるが、残念ながらテレビでは何かと規制が多いため、同シリーズならではの魅力が、視聴者に十分伝わったとは言い難かった。 それとは逆に、劇画を原作とする『子連れ狼』では最初からお色気キャラが考案され、映画版、テレビ版でもそのままのコスチュームが採用された。移動時は着物姿ながら、いざ主人公である拝一刀との戦闘になると、上はビキニ、下はスパッツという、およそありえないコスチュームになり、一刀に斬られて死ぬときはビキニも両断されるサービス・ショット付きだ。 テレビ時代劇の『子連れ狼』は1973年からから1976年まで放送されたが、実はこの頃、NHK大河ドラマでもセクシーキャラを取り入れていた。1976年放送の平将門を主人公とした『風と雲と虹と』では木の実ナナ演じる傀儡の美濃、1979年放送の北条政子を主人公とした『草燃える』では、かたせ梨乃演じる盗賊の小観音が、それぞれ両太ももを惜しげもなく披露した。 傀儡の美濃は傀儡舞を披露する際にミニスカート風衣装と網タイツ姿、盗賊の小観音は普段からミニスカート風衣装で、戦闘時に一度だけだが、ミニスカートの中をすべて見せる場面もあった。まさに「ふてほど」、今からは考えられないシーンである。
レオタード姿の「お銀」
しかし、昭和50年代に入るとテレビ時代劇から、こうした過激なコスチュームが急激に「退場」する。 1978年にテレビ朝日系列で放送開始の『暴れん坊将軍』では、女性の御庭番は着物か忍者装束のどちらかで、露骨な露出は避けられていた。小川真由美が主演を務めた『浮世絵 女ねずみ小僧』と『ご存じ! 女ねずみ小僧』も1970年代の作品だが、ここでもお色気コスチュームの採用はなし。ミニスカートとホットパンツのブームが終息したのも昭和50年頃だから、やはりこれも時代相の反映か。 いよいよ潮目か…というなかで際立ったのが、TBS系列で放送された『江戸を斬る』の第2部から第6部(1975~1981)に登場した、松坂慶子演じる「魚屋のおゆき」である。 彼女の正体は徳川斉昭と妾の間に生まれた水戸徳川家のお姫様。夜は紫頭巾として悪を討ち、昼間は魚屋「魚政」の看板娘として町娘姿で働くが、天秤棒を担いで魚を売り歩くときは男衆と同じ服装。つまり、生足を思い切り晒す格好で、スタイル抜群の彼女だけに、その出で立ちは世のおじさんたちを虜にしてやまなかった。 更に1980年代後半になり、一般女性の間でミニスカートの流行が再来したことに後押されたのか、1988年にTBS系列で放送の『水戸黄門』にあの人気キャラクターが登場する。由美かおる演じる「かげろうのお銀」である。 身にまとうは、バレエのレオタードや網タイツをモチーフにした紺色のミニスカート風の忍装束。江戸時代にはとうていありえない装束だが、由美かおるを女神のごとく敬うおじさんたちはここでも時代考証を脇に置き、由美かおるの肉体美を最大限引き出しているとして、そのコスチュームを肯定的に受け入れた。