中国、暗号資産を完全には禁止していない
社会の安定
上記の文章は、重箱の隅をつついているように見えるかもしれない。中国の規制は暗号資産取引を非常に困難にしており、実質的な禁止に等しいと主張できるだろう。 しかし、現状を理解するためには、規則そのものだけでなく、規則がどのように施行されているか(あるいは施行されていないか)にも目を向ける必要がある。 中国の暗号資産取引取り締まりが暗号資産取引を止めなかったことは周知の事実だ。チェイナリシス(Chainalysis)によると、中国のトレーダーは2022年7月から2023年6月までの間に暗号資産活動から860億ドルを得ている。 海外の取引所で開設した口座を使い続けるケースもあった。VPNが必要な場合もあれば、不要な場合もあった。ウィーチャット(WeChat)やテレグラム(Telegram)のようなソーシャルメディアアプリを介したピアツーピア取引も可能だった。 仲介業者を通じて海外に会社を設立し、その海外の会社を使って暗号資産取引所でKYC(本人確認)を行ったという話もある。 ビットコインのような分散型通貨を政府が封じ込めることは難しい。しかし、一般的な西側メディアのストーリー、つまり中国当局に隠れて人々が暗号資産を取引しているというストーリーはまったく正しくない。 別の言い方をすれば、もしバイナンスが中国で900億ドルの取引をしていたなら、中国当局はおそらく何か知っていただろう。 事実、前述のバイナンスの中国での取引高を伝えるウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、バイナンスの90万人以上のアクティブユーザーの犯罪行為を特定するために、現地の法執行機関がバイナンスと緊密に連携していたことを指摘している。 オンライン暗号取引所をチェックし、個人投資家にインタビューした結果、ロイターは「本土ではビットコインへのアクセスはそれほど難しくない」ことを明らかにした。これほど多くの暗号資産取引が「禁止」を生き延びたという事実は、中国が暗号資産を抹殺するつもりはなかったことを示唆している。 むしろ、主な目的は参入障壁を高めることだった。この意味で、新しい規則は極めて効果的だった。取引をより不便にすることで、暗号資産が素人投資家たちに広まるのを防ぐことができる。 中国政府が最も望まないことは、投資家が街頭で損失に抗議することだ。すべては中国の政策における重要な原則のひとつに帰結する。社会の安定を守ることだ。