“呪われたプロレス一族”の実話を描く映画「アイアンクロー」 本格プロレスシーンと重厚な人間ドラマに注目
映画では少年時代のケビンがふざけて父にアイアンクローを仕掛け、デビッドがデビュー戦でアイアンクローを駆使し勝利を得る。オリンピック出場を断念したケリーはレスラーデビューを命じられ、自宅のリングで父からアイアンクローを伝授される。映画で描かれるアイアンクローが、まるで呪文のような役割を果たしているのである。
とはいえ、彼らが本当に呪われていたかは誰にもわからない。映画でも、あえて解明されることもないし正解も示されない。しかしながら時代の流れととともに呪縛からの解放が希望とともに示唆される。当時はWWF(現WWE)の全米侵略が着々と進行しており、テリトリー制のプロレスは衰退。エリック派のダラスも例外ではなく、むしろその代表格だったと言っていい。ケリーのWWF参戦はその予兆でもあったのだ。この作品はまさしく、古きよきアメリカンプロレスへの鎮魂歌。作品としても数々の映画祭で受賞&ノミネートをはたしており、ナショナル・ボード・オブ・レビュー・アワードではザック・エフロンをはじめとする演技陣がベストアンサンブル賞を受賞、今年のアカデミー賞を席巻した『オッペンハイマー』などと並び、本作がトップ10フィルムズに選出されている。 プロレスファンにも映画ファンにもおすすめできる『アイアンクロー』。神話に昇華した伝説……エンドクレジット後の余韻を味わえる映画でもある。 『アイアンクロー』 4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー 配給:キノフィルムズ © 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved. 監督・脚本:ショーン・ダーキン 出演:ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソンほか 【詳細情報】 監督・脚本:ショーン・ダーキン 出演:ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン、モーラ・ティアニー、スタンリー・シモンズ、ホルト・マッキャラニー、リリー・ジェームズ 2023年/アメリカ/英語/132分/カラー・モノクロ/ビスタ/原題:THE IRON CLAW/字幕翻訳:稲田嵯裕里/G © 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved. 提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
文/新井宏