セミを死ぬまで交尾に駆り立てる「セックスゾンビ菌」、周期ゼミ大発生の米国で感染拡大
米国で221年ぶりに2つの周期ゼミ「13年ゼミ」と「17年ゼミ」の発生が重なる中、これらのセミを死ぬまで交尾に駆り立てる「セックスゾンビ菌」ことマッソスポラ・シカディナの感染が、米イリノイ州で広がっている。感染したセミは腹部が削げ落ち、代わりに胞子の塊が生え、見つけたセミと手当たり次第に交尾をしながら感染を広げるという。 米イリノイ州で、死ぬまで交尾に駆り立てる「セックスゾンビ菌」に感染したセミが急速に広がっている。セックスゾンビ菌ことマッソスポラ・シカディナは、いま全米で大発生している13年と17年の周期ゼミをターゲットにしている。 シカゴのフィールド自然史博物館のジム・ラウダーマンさんは、この菌が感染を広げる仕組みについてこう話す。 フィールド自然史博物館 ジム・ラウダーマンさん 「(感染したセミは)性欲が高まり、見つけたセミと手あたり次第交尾したがる。そしてその際に胞子をほかのセミに移す。つまり基本的には性感染症なのだ」 この白い菌は、すでにイリノイ州の中部と南部で感染を広げていて、シカゴ地域でも発生し始めている。 セミの性欲が増すからと言って、子が増えるわけではないという。 「この菌に感染するのは、セミの10%以下だけだ。感染すると胞子を作って結実し、腹部の後ろの3節を削ぎ落し、代わりに胞子の塊を宿す。胞子の塊は球状でフワフワしていて、セミの背中にぶら下がっている。背中が剥がれ落ちるときに、生殖器も一緒に落ちてしまうので、セミは交尾できなくなる」(ラウダーマンさん) 研究者のマット・ニールソンさんは、ゾンビ菌の感染経路は他にもあるという。 フィールド自然史博物館 マット・ニールソンさん 「セミの尻にこのような栓のようなものがくっついているのが見える。それは胞子の塊だ。このセミが飛び回ることで、他のセミに胞子が降り注ぐ。だから『空飛ぶ死の塩の瓶』というニックネームがついた。私はなかなかいい名前だと思っている」 まるでゾンビによる終末を描いたフィクションのようだが、ラウダーマンさんによると、この菌は周期ゼミ以外には感染せず、人間は安全だそうだ。