蒲蒲線がまた一歩前進「羽田アクセス」新路線の現在地 国が予算案に費用を初計上、JR新線の進み具合は?
■「前進」だが開業は十数年後? 同線の構想は1980年代にさかのぼる。2016年には国の交通政策審議会が取りまとめた東京圏の鉄道整備についての答申で「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」の1つとされたが、その後しばらく進展はなかった。東京都と区の費用負担の割合の調整に時間を要したためだ。 新空港線(第1期)の事業費は、2022年時点の試算で約1360億円。国と地方自治体がそれぞれ全体の3分の1を補助し、残る3分の1は路線をつくる整備主体が調達する「都市鉄道等利便増進法」という制度を活用する計画だ。都と区が協議を続けていたのはこの地方自治体分の負担割合で、2022年6月に都が3割、区が7割を負担することで合意した。
これを受けて同年10月には、整備主体となる第三セクター「羽田エアポートライン」が区と東急電鉄の出資で設立され、実現へ大きく弾みがついた。今回、国交省が概算要求に費用を盛り込んだことで、2025年度は事業化へ向けた動きが本格的に進むことになりそうだ。区の担当者は「今後、事業化に向けた手続きを進めるうえで、国と具体的な相談や協議をできる段階になった」と話す。 ただ、順調に進んだとしても開業までの道のりは長い。区によると、「事業化に向けた手続きなどに3~4年、実際の工事は10年程度を要すると考えられる」ため、開業は早くても2030年代後半になるとみられる。
さらに、京急蒲田駅から先、京急空港線への乗り入れを想定する「第2期」については、線路幅の違う東急線と京急線の直通という技術的に大きな課題があり、「検討は行っているが、具体的なところは決まっていない」(区の担当者)段階。空港に直結しない状態は長く続きそうだ。 2022年時点の需要予測では、第1期整備区間の利用者は1日約5.7万人で、このうち航空旅客は1.5万人と見込む。都と区の費用負担割合が3:7なのは、都が「空港アクセスに関する旅客等その他の旅客分」、区が「空港アクセスを除く大田区発着に関する旅客分」を負担することにしたためだ。つまり、京急蒲田駅までの開業では「地域の交通機関」としての役割のほうが大きいといえる。