【FP解説】節税したいという考えは、脱税につながる可能性がある!
先日、大手芸能事務所の性加害問題をめぐって前社長が代表取締役に残留する意向を示したのは、相続税の支払いを免れるためだったという一部報道がありました。その後、すべての関連会社の代表から降りることを明かしていますが、この報道は事業承継税制を活用した相続税の免除について言及しているようです。 ファイナンシャル・プランナーである筆者も、協業する税理士とともに中小企業法人の経営者からの事業承継税制に関する相談には応じたことはありますが、ここでは事業承継税制ではなく、節税をしたいという価値観が思わぬ危険を招くことについて考えていきます。
実際にあった節税に関する相談
以下は夫45歳、妻43歳、子ども2人という家庭の夫から寄せられた相談です。 親が高齢なので、万が一のことが起きる前に住宅の売却を検討しています。空き家になった場合も想定し、売却後に税金がかからないようにするにはどう対策すればいいでしょうか。 初回の面談にて信頼関係を築くことを目的に、具体的な相談内容を傾聴しましたが、通常、こうした案件については税理士業務となり、税理士事務所との協業を前提に話を進める必要があることから、より詳細な内容を伺いました。 結論をいうと、この案件については引き受けませんでした。その理由は、悪質な節税対策、もしくは脱税に結び付く可能性のある案件だったからです。 途中までは、「居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除の特例」という税制に関する節税の相談かと考えていました。しかし、詳しく話を伺っていると、売却を検討しているという住宅は実家ではなく、親が所有しているセカンドハウスであり、控除の適用を受けるための居住要件を満たす方法を教えてほしいということでした。 この相談については、控除の要件を満たすだけなら俗にいう裏技があったりしますが、そのような対応は筆者の事務所も、協業している税理士事務所も法的に好ましくないと判断しているため、結果として契約を結ばず、依頼を引き受けないことになりました。