「膨大な仕事量で…」同意ないまま障害者の支援計画作られ・・・家族ら「ショック」 1人で“100人超担当”の人手不足や発達障害の子ども急増、問題相次ぐ背景
「ショックだった」と親側
障害者のサービスの利用先や支援目標を記す「サービス等利用計画」を巡り、計画を作る相談支援専門員が障害者本人や家族の同意なしに署名欄に記入したり、空欄のままにしたりするケースが長野県の須坂市、上高井郡小布施町、同郡高山村の3市町村(須高地域)で相次いだことが、分かった。 【写真】同意のないまま計画が作成されていた親子
3市町村はいずれも計画をそのまま受理し、サービス利用に必要な受給者証を発行。サービス利用者が増加する一方で、専門員が足りていない状況などが背景にあるとみられる。
法に基づく基準では「同意を得なければならない」と明記
計画は障害者がサービスを利用する際に必要で、入所施設などが策定する、本人の課題や支援目標を細かく示した「個別支援計画」の基になる。定期的な見直しや更新が必要で、障害者総合支援法に基づく基準は、サービス等利用計画について「利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者等の同意を得なければならない」と定めている。
「本人確認済み」と無断で記入
重度障害がある須坂市の男性は昨夏、計画の更新時期を迎えたが、担当の専門員は説明を省き、「利用者同意署名欄」に「本人確認済み」と無断で記入して市に提出。母親の訴えで発覚し、専門員が所属する相談支援事業所は計画作成で得た報酬を市に返還した。
同意署名欄を空欄で提出
市によると計画の「虚偽の作成」はこの1件のみ。一方、同意署名欄が空欄で提出された例は新規・更新合わせて須坂市で23件(今年2~5月)、小布施町で38件(昨年2月~今年1月)、高山村で14件(同)がそれぞれ確認された。厚生労働省は計画について「利用者の自己決定の尊重や意思決定の支援に配慮し、利用者の希望を踏まえて作る必要がある」と指摘。「同意の過程は権利擁護の観点からも重要で、結果的に虐待など不適切な支援の防止にもつながる」とする。
支援計画についても「内容の説明はなかった」
3市町村は「同意の過程が形骸化していたわけではない」と主張するが、保護者の認識は異なる。須坂市の女性は、重度障害がある次女の署名欄が空欄で市に提出され「事前のやりとりもなく、気が付けば家に受給者証が届いていた」と話す。小布施町の女性も知的障害がある長女の計画について「内容の説明はなかった」とする。ともに利用者本人や家族に交付されるはずの計画は届かなかった。