お花見トレイルラン|桜が咲いたら、山へ走りに行こう!
お花見トレイルラン|桜が咲いたら、山へ走りに行こう!
四季折々の風景を楽しめるのが、日本の山の魅力。春の代名詞、桜だって山で満喫できる。4月、お花見ランに向かうは、伊豆の山々――。 文◎編集部 Text by Field Life 写真◎小関信平 Photo by Shimpei Koseki 出典◎フィールドライフ No。55 2017 春号。
今日のスタートは桜トレイルから
「ふたりとも、最近ロードを走ってるんです。トレランにも興味があるんですけど、どうやって始めたらいいかわからなくて……。今度いっしょに走ってくれませんか? 」。 キリッとした表情で、とあるランナーに向かってそう切り出すのは、最近トレイルランに興味津々だという田中さん。おやつユニットOnakaとして活動するほか、カフェ店主でもあり、元アルペンスキーヤーという超アクティブな女子だ。 対するOnakaのパートナー、小澤さんはゆるふわ〞という形容詞がぴったりな、穏やかな笑顔が印象的な女性。見た目に反して小澤さんも最近ランにハマっているそうで、トレイルランもぜひ体験してみたいという。「いいね~、大歓迎! じゃあ、春らしいところに行こう! 」。 と嬉しそうに答えるのは、某シンガーのような濃い顔が特徴の舘下さん。舘下さんは国内外の数多くのレースに出場しているバリバリのトレイルランナーだ。女子ふたりにお願いされ、ここは乗らないわけがない。 3人が向かったのは、桜が満開を迎える伊豆半島の達磨山。このあたりはマメザクラの名所として有名な場所であり、「伊豆トレイルジャーニー」というトレランレースのコースにもなっている。道がよく整備されていて、初心者にもぴったりの場所だ。 「お、田中さんのそのピンクのジャケット、桜の花みたいだね。似合ってるよ~」。テンションを上げてもらうためか、それとも別の含みがあるのか、舘下さんは朝から口が滑らか。コンディションはばっちりのようだ。 「ちょっと緊張しますね。でも思ったより暖かくて、気持ちいいな~」。そう笑顔で話す小澤さん。いつもにこにこしている小澤さんは、初めてのトレランで気分が上がってきたのか、それともただの平常運転なのか、傍目からはわかりにくい。だが、これからの時間を楽しみにしているのは間違いなさそう。 準備運動をしたあと、3人はパックを背負うが、ここでリーダーからストップが。「あー、小澤さんパックのフィッティングがゆるそうだね。ここを絞ると体にフィットすると思うよ」。 なれた手つきでパックのストラップを調整するリーダー。的確なアドバイスだが、なぜかやっぱり含みがあるように見えるのは気のせい? 歩き出した3人の目の前には、樹高が低く、手が届くくらいの高さに渋いピンク色の花をつけているマメザクラが。大ぶりの花を咲かせるソメイヨシノより控えめだが、その可憐な姿にOnakaのふたりはすっかり心奪われたようす。 気がつけば濃い顔リーダーも桜を見上げてさわやかな笑顔を浮かべている。もうこれだけでも満足という表情だ。 「じゃあ、ゆっくり行きましょう! 」。リーダーの掛け声で、田中さんを先頭に、小澤さん、リーダーが続く。歩き出したと思ったら、3人は自然と駆け足に。 Onakaのふたりにとってトレイルランは今回は初めて。でも街を走っているのと、山登りの経験はあるからか、山を駆けていく姿はごく自然。トレイルランをしている、というよりは、子どもがはしゃいで野山を駆けている、そんな姿にすら思えてくる。 すぐに今日のひとつ目のピークである金冠山の山頂に到着。「桜を抜けて海が見えてくるなんて素敵ですね! 景色を見ながら休憩にしましょうか? 」。 田中さんの仕切りで、リーダーがパックからガサゴソと取り出したのは、ぎんなんとビーフジャーキー。まるで酒のつまみのようだが。こう見えて健康オタクであり、グルテンフリーを実践するリーダーはこれがいいのだそう。 対して小澤さんが取り出したのは、手作りの黒ごまきな粉クッキー。さすがはおやつのプロ。さっぱりしてそうな見た目で、ラン中でもバクバク食べられそう。いつもはグルテンフリーのリーダーもこのときばかりは特製おやつを堪能。 「今日はこれだけでも十分満足だけど、せっかくだから達磨山まで走りましょう」。 ふたりは待ってました〞とばかりに、またゆっくり走り出す。登りは歩いて、平坦なところと下りはするすると駆ける。トレイルランっていうと険しい表情でガツガツ〞走るイメージばかりが思い浮かぶが、3人はいたって穏やかな顔つき。 歩くのともまた違って、全身で風を感じているような気持ちの良さが表情から、動きから伝わってくる。「あっという間に達磨山ですね! 走り足りないくらいですけど、はじめてですし、これくらいでちょうどいいかもしれないです」。 そう話す田中さん。小澤さんの表情も満足気。リーダーも同じ表情、のように見えるけれど瞳の奥はちょっと淋しげ? 本当はもう少し3人の時間を楽しみたかった? 今年ももうすぐマメザクラの季節がやってくる。もしかしたら、いまごろリーダーの誘いをふたりは待っているかもしれない。また3人でゆるっとした時間を楽しみに行っちゃう? 文◎編集部 Text by Field Life /写真◎小関信平 Photo by Shimpei Koseki /取材協力◎エイアンドエフ、フルマークス/
フィールドライフ編集部