「どうして赤字に?」「もっと経費を削減できないのか」。34年ぶり、136億円もの赤字となったNHK。「赤字でも黒字でも叩かれる」稀有な組織への”モヤモヤ”の正体とは?
NHK(日本放送協会)が34年ぶりの赤字決算となり、SNS上では経営体制を批判する声が相次いでいる。しかし、過去のSNSの反応を振り返ってみると、NHKは「黒字でもたたかれる存在」であることがわかる。 【衝撃グラフ】34年ぶり、136億円もの巨額赤字のNHK。しかし、例年は200~400億円もの利益が…受信料の値下げが原因? 決算がどちらに転んでも、バッシングの的になるのは、なぜなのか。長年SNSを中心に、メディアを見てきた立場から、背景を考察してみると、NHKそのものへの違和感と、テレビ業界全体への疑念、そしてライフスタイルの変化が絡み合った結果なのではないかと感じる。
■NHKの赤字決算は34年ぶりの出来事 NHKは2024年6月25日、2023年度の単体決算を発表した。事業収入は、受信料の減収等により、前年度比433億円減の6531億円に。増減率は前年比マイナス6.2%となった。一方の事業支出は、前年度(6702億円)から微減の6668億円に。結果として、収支で見ると136億円の赤字となった。 NHKの赤字決算は1989年度以来、34年ぶりの出来事となる。収入が減った背景には、受信料の値下げがある。事業収入のうち、受信料収入のみを見ると、前年度の6725億円から5.9%減の6328億円となっている。
NHKは2023年10月、受信料を1割値下げし、たとえば衛星契約は月2170円から1950円になった。あわせて学生免除の対象者を拡大させた結果、大幅な減収につながったと報じられている。 ただ、値下げから半年で5.9%減となれば、年間で見ると、受信料の値下げ幅である1割を超えることになる。なお、予算の段階では280億円の赤字を見込んでいたが、これでも赤字額は136億円に抑えられている。 今回の赤字決算を受けて、SNS上ではNHKをたたくような投稿が相次いでいる。多くは「どうして赤字になるのか」「もっと経費を削減できないのか」というもので、職員の給与を減らすことで、赤字を埋めるよう求める声も相次いだ。 そんなNHKだが、SNS上では「黒字でもたたかれる組織」でもある。黒字決算だった2022年度以前の投稿を見てみると、「民間企業でないのに利益を上げるのはおかしい」「黒字なのであれば、そのぶん受信料の値下げに充てるべきでは」との指摘があった。赤でも黒でも、なにかとバッシングの的にされやすい存在なのだ。 ■嫌われる理由は「NHK」と「テレビ全体」の2因 ではなぜ、NHKは嫌われるのだろうか。ネットメディア編集者として10年以上、ネットを見てきた筆者としては、大きく分けて「NHKそのもの」と「テレビ全体」の2方向に問題があると思われる。まずはNHKそのものの「たたかれやすい背景」を考えてみよう。 SNSを眺めていて、一番伝わってくるのが、「殿様商売への反発」だ。テレビ受像機があれば、その家からは受信料を徴収できる。それを根拠にして、ことあるごとに受信料を払うよう求めてきて、困惑したといったエピソードは、ネット上でも多々見られる。 後にも説明するが、「一家に一台はテレビを置いている」という前提が崩れた現代では、果たして自分の生活に必要なのかと、立ち止まって考える人も多い。解約か継続か、つまり「ゼロ円か、2000円か」の2択で悩む人々は、そもそも1割値下げした程度で「安くなった感」を得られない。