タクシー乗務員の健康増進を実現する、日本交通の「ウェルネス経営」とは
タクシー乗務員の健康は、本人・会社・お客様にとっての三方よし
――今後取り組みたいことがあれば、お聞かせください。 今後取り組んでいく予定の施策は二つあります。一つ目は、目の健康チェックです。目はタクシー乗務員が安全に運転をする上で非常に重要です。目の疲れやストレスによって視覚認知が低下したり、緑内障や白内障などの病気によって見えにくくなったりすると、事故につながる可能性が高まります。そこで定期健康診断に加えて、網膜投影技術を応用した機器による目の健康チェックを行い、結果によって眼科の受診を勧めています。 二つ目は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の啓発活動です。COPDとは長年にわたる喫煙により、肺の働きが低下する生活習慣病の一種です。タクシー乗務員は、喫煙者の割合が高いため、このような取り組みを行っているのです。一部の営業所で従業員にアンケート調査を行い、COPDと診断された、あるいはその可能性がある従業員には、セミナーを受講してもらっています。 ――今後、改善していきたいことはありますか。 従業員の健康管理は継続していきますが、従業員から「健康に関してこんな取り組みをしています」とボトムアップで報告してもらえるような職場環境になっていくとうれしいですね。 ――CWOとして考える、健康経営の重要性についてお聞かせください。 タクシー業界は人が資本です。乗務員が元気にスケジュール通りに働いてくれることが、乗務員と会社の双方にとって利益になります。一人ひとりの乗務員の力が利益を生み出し、4000人集まって会社としての利益になっているわけです。 平均年齢が高い業界ですが、高齢になればどうしても病気になる確率は上がります。しかし健康経営の取り組みによって、病気を早期発見できれば、長く働くことができる。この差は非常に大きいですよね。 日本交通で働いている人には、ずっと長く働いてほしい。本人も当然、長く働ける方がいいはずです。最近はタクシー乗務員の人手不足が課題となっています。健康で長く働くことができれば、乗務員だけでなく、会社・お客さまにとっても良い状態で、まさに三方よしですよね。 乗務員が健康であることは非常に重要です。健康経営として取り組めることはまだまだあるので、今後も推進していきます。
プロフィール
畠山 明秀さん(日本交通株式会社 上席執行役員CWO) はたけやま・あきひで/1987年日本交通株式会社入社。タクシー乗務員を約10年経験し、運行管理者の経験を経て、品川営業所・新木場営業所・千住営業所・葛西営業所の所長を歴任。現在、役員としてタクシー部門を統括すると共に、CWOとして社員の健康管理のための種々の施策を取り仕切る。