三井住友信託、元社員がインサイダー取引疑い 社長「深くおわび」
三井住友信託銀行は1日、元社員が金融商品取引法が禁じるインサイダー取引をしていた疑いが判明したと発表した。同行では調査委員会を設置し、事実関係の確認や原因分析などを進める。大山一也社長は東京都内で記者会見し、「関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけし、深くおわび申し上げる」と陳謝した。 同行によると、不正が疑われるのは元管理職。10月30日に本人から申告があり、自己の利益を図る目的で複数回、不正な取引をしていた疑いが浮上した。1日付で懲戒解雇したという。 大山社長は「高い倫理性や自己規律が要求される信託銀行社員が顧客の信頼を損なう法令違反を犯し、社会的存在意義が問われかねない事態であると深刻に受け止めている」と話した。 社内管理体制としては、インサイダー取引に関する研修を年2回実施するなどしていたといい、大山社長は「当社でもインサイダー防止の教育は徹底していた。本人もその重大性は認識していたと思われる」と述べた。 元管理職の性別や年齢、具体的な取引内容などは「調査、捜査に影響する」として明らかにしなかった。そのうえで、公表を急いだ理由を「深刻な事態であり、いち早く知らせることが重要と考えた」と説明した。 同行では2012年、合併前の旧中央三井アセット信託銀行で「増資インサイダー問題」が発覚し、金融庁から課徴金納付命令を受けた。大山社長は「個人の自己売買に対する(会社としての)対応が不十分だったのかどうかも含めて原因を究明し対策を講じたい」と述べた。 インサイダー取引を巡っては10月、証券取引等監視委員会が東京証券取引所の社員や金融庁に出向していた裁判官に対し、株式公開買い付け(TOB)の未公表情報を使って不正に株式の取引をするなどした疑いで強制調査している。【井口彩、竹地広憲】