保護司殺人に「あり得ない」と25年活動した女性 担い手不足の現実と「信じてあげる役割」の尊さ
「少年の場合は大人、成人の場合は世間に対して不信感を抱いている。彼らを信じて行動しなければ、どんどん孤立してしまう。彼らは崖っぷちにいるから。あと一歩でどん底に落ちてしまうから。どんな状況でも、彼らを信じてあげることが保護司の役割なの」 ■思わぬ電話が生きがい 定年まで長く続けてこられたのは、生きがいを感じてきたからだという。 服役囚や少年たちとの接点は出所後だけではない。少年院では保護者のほか保護司のみ、手紙での連絡が許されており、在院時から連絡を取り合うことがある。 保護観察期間が終わった後も近況をしらせてくる元受刑者は意外に多い。Aさんの場合、今も電話、メールでのやりとりがあるという。 また、保護観察は原則、保護観察者が住んでいる居住地の地区を担当している保護司が担当するため、道中で出会うこともしばしばある。 「元気そうな姿を近所のスーパーで見かけると嬉しい。ああ、ちゃんと頑張っているんだなって」 出所後、建設現場での下積みを経て事業を起こした人もいる。数十人ほどの従業員を抱える建設会社の社長だ。 その社長から思いがけぬ電話を受けたことがある。 「出所してきた人が就職に困ったら、うちで引き受けるよ」。 Aさんが保護司をやってきて、最もうれしい思いをした瞬間だったという。 ■非行少年「保護司、殴りたいこともあった」 お世話になる側は保護司のことをどう受け止めているのか。 17歳で事件を起こし、少年院に入り、仮退院後に保護司との支援を20歳になるまで受けたという30代の男性が取材に応じた。 男性は暴行や窃盗などで3回逮捕され、最終的に1~2年の長期少年院への送致となった。この間、少年には3人の保護司がついた。 「何もしない保護司もいた。ただ淡々と話を聞くだけ。地元では”当たり”と言われて、ファミレスでご飯を奢ってくれるだけのおじいちゃんでした」と打ち明ける。うるさく説教される面倒くささがないことが「当たり」なのだという。