南海トラフ巨大地震に富士山噴火…「いつ来るかわからない災害に予算がつかない」厳しすぎる現実
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
自然災害にどう備えるか
海面上昇や自然災害の激甚化による被害の深刻化を防ぐため、東京都は2022年11月に全国で初めて防潮堤をかさ上げする計画案を公表した。東京湾に設けた総延長約60キロのうち半分近くをかさ上げする。高さは海抜ゼロメートルの東部低地帯で1.4メートルだ。 異常を早く察知するためAIの活用も進めている。江東区と港区の「高潮対策センター」はリアルタイムで水の流れを監視。全15水門の遠隔監視と操作が可能で、気象観測や予報、水位のデータからAIを使って水位の変動を予測し、最適な水門閉鎖のタイミングを知ることができる。 また、高潮時に迅速な避難ができるよう東京都はパソコンやスマホで観測データや海面の映像、水門の閉開状況などを公開している。 国連防災機関(UNDRR)は、2030年までに中規模から大規模の災害発生件数は世界で一日あたり1.5件に達するとの見通しを示している。だが、トップを務める水鳥真美氏は「近年の自然ハザードの9割は気候変動に関連している。世界では全人口の3分の1が早期警報システムでカバーされておらず、人の命が危険にさらされたままだ。ODA(政府開発援助)を見ても、災害被害を受ける前の減災に充てられている予算は非常に低い」と指摘する。 いつ襲来するのかわからない分野に予算を割くことよりも、目先の課題に重きを置いている傾向があるのだという。だが、自然災害はひとたび襲来すれば甚大な被害を生む。事前に対策と準備ができていれば被害を最小化することは可能だが、「いつ来るのかわからないものに予算をかけるのはもったいない」「自分には関係がない」と考えてしまえば無防備のまま脅威に挑むのも同然と言えるだろう。 2023年6月、日本列島は台風2号による記録的な大雨に襲われた。積乱雲が連なる「線状降水帯」が四国から東海にかけて11回発生し、浸水被害などが相次いだ。この台風2号は「災害級の大雨」と事前に注意喚起されたため事前予想よりも被害は抑えられたが、もしも襲来が首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生と重なっていたらどうだろう。富士山の噴火による降灰の影響も大雨で深刻化する。 たしかに、異常災害はいつ襲ってくるのかはわからない。だが、逆に言えば「いつでも」発生し得るということだ。これまで何度も台風や豪雨、地震を乗り越えてきたからといって油断してしまえば、異常化・深刻化する猛威と闘うのは難しくなるかもしれない。自らが成長してきたように、自然災害も悪い方向に成長するという意識を持ち、最新情報に留意しつつ備えも見直すことが求められている。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)