日本人初の世界獣医師会会長へ 蔵内勇夫氏「ワンヘルス」のグローバルスタンダードが目標
日本人初の世界獣医師会(WVA)の会長就任が決まった自民党の蔵内勇夫福岡県議(70)=写真=が産経新聞のインタビューに応じ、「人の健康、動物の健康、環境の健全性を1つの健康と捉え、一体的に守るワンヘルスの考え方を世界に浸透させたい」と抱負を語った。人獣共通の感染症対策を強化するため、アジア獣医師会連合(FAVA)とアジア大洋州医師会連合の連携に関する基本合意を8月に結ぶ方針も明らかにした。 WVAは米国やスペイン、日本など70カ国・地域が加盟する団体で、会長選では蔵内氏を含む4人が立候補した。蔵内氏は加盟団体の約7割の得票を集めて次期会長に選ばれた。 会長任期は令和8年から2年間。蔵内氏は現在、FAVAと日本獣医師会の会長も兼務しており、出馬経緯について「『FAVAで進めてきたワンヘルスを世界に広めるべきだ』との声があり、多くの仲間から推薦された」という。 蔵内氏は「今、地球は温暖化や環境破壊などで悲鳴を上げている。人が健康に暮らすには動物、そして地球も健康でなければならない。こうした課題を解決するのがワンヘルスであり、この実践を通して美しい地球を次世代に引き継いでいく必要がある」と述べた。 その上で「ワンヘルスのグローバル・スタンダード化に寄与するのが、2年12月に成立した福岡県ワンヘルス推進基本条例で示した考え方になる」と説明した。同条例では①人獣共通の感染症対策②薬剤耐性菌対策③人の健康④動物の健康⑤地球の健康(環境保全)⑥共生社会づくり-の6つの課題に対して基本方針を設定し、3年4月に県は実行計画を策定した。 現在、福岡県ではワンヘルスの考え方に沿って生産販売される農林水産物や加工品の認証制度や小中高校でのワンヘルス教育などを進めており、同じような取り組みを世界各国・地域で実践する必要があるとの認識を示した。 全世界で猛威を振るった新型コロナウイルス禍について「昔からパンデミックは人間社会を変える大きな原動力になってきた。新型コロナを経験したわれわれは、ワンヘルスという生き方を受け入れ、実践することで大きく進化するだろう」と語った。 人獣共通の感染症は人の感染症の約6割を占めるといわれており、感染源と感染経路、病原体が侵入する宿主の3つの要因への対策が急務となっている。「新型コロナでは国と国の情報共有がスムーズに行かなかった。こうした反省点を生かし、世界の研究者らが感染症関連の情報を共有できるシステムの構築を急ぐべきだ」と次のパンデミックに備えた体制整備の必要性を訴えた。