「初恋を奪われた…」時代を超えて愛される『忍たま乱太郎』土井先生の魅力をあらためて深掘りしてみた
■実は忍者としての実力も高い
天才忍者の大川平次渦正が創設しただけあって、忍術学園の生徒たちはなかなか粒揃いで忍者としての能力も高い。入学金さえ払えば誰でも入れる学園とはいえ、指導する教師たちの実力が高いこともその理由だろう。 土井先生は教科担当だが、抜け忍で実践経験もあるので忍者としての実力も兼ね揃えている。たとえば、土井先生をライバル視し、作中、幾度となく戦闘を仕掛けてくるタソガレドキ忍者・諸泉尊奈門との一戦では捻挫をしているときやクナイを持ち合わせていたのにもかかわらず、チョークや出席簿、三角定規などの文房具を使用して勝利。百発百中のチョーク投げは、もはや土井先生の特技だといえよう。 また、忍術学園の教師陣のなかでは最年少の土井先生だが、作中では先輩教師に対して丁寧に接する姿も印象的だ。 トラブルメーカーでもある学園長や女装好きの山田伝蔵、すぐ空腹になる戸部新左ヱ門、いるかいないかあまりに存在感のない斜堂影麿……などなど、ひと癖もふた癖もある教師たちとうまくやっていっているのをみるとコミュニケーション能力もかなり高いと思われる。
■教師になったきっかけは? 暗い過去を持つところを見せない強さも魅力
優しく爽やかな土井先生だが、実は壮絶な過去を持つ人物であることをご存じだろうか。原作『落第忍者乱太郎』では、もともと裕福な家庭に生まれたが、子ども時代に襲撃に遭い天涯孤独になり、その後仏門に入って忍術を磨き、抜け忍となったことが描かれている。 そんな土井先生がなぜ教師になったのか……それが描かれたエピソードがある。それが「思い出した手当ての段」だ。 昔、任務に失敗した土井先生は、崖から落ち負傷したところを追手に狙われていた。そこに間一髪で助けに入ったのが、たまたま家族でピクニックに来ていた山田先生だった。 その後、傷の手当てを受け、山田家にしばし居候することになった土井先生。その間、せっかくのピクニックが中断となり寂しそうにしていた利吉の心を察し、「キャッチ手裏剣をしよう」「カニ、獲りに行こうか」と、優しく声をかけ2人で遊ぶのだ。 当初、利吉は家族でのピクニックを喜び、父・山田先生と一緒にキャッチボールやカニ獲りなどを楽しみたいと思っていた。しかしそんなピクニック中にまで忍術の練習をさせようとしてくる父に不満を抱える。そのうえ、土井先生と遭遇した騒動でお弁当の時間までが台なしになり、とても落ち込んでいたのだ。 我が子の心を見抜けない不器用な山田先生に対し、遊びのなかで忍術の練習を取り入れながら利吉を楽しませようとする土井先生。 一連の流れを見ていた山田先生の妻は「あの方、教師に向いているみたい。あなたより良い先生になるかもしれませんね」と、山田先生に進言している。そして、この出会いがきっかけで、土井先生は忍術学園の教師になるのだった。 利吉は成長してフリーの忍者となり、いまだに土井先生のことを慕って「お兄ちゃん」と呼ぶ。暗い過去を見せない強い心、そして、大人子ども関係なく優しく丁寧に接する土井先生の姿は魅力的で、巷で「初恋キラー」なんて呼ばれている理由も分かる気がする。 「土井先生ときり丸の段」では、村を襲われ孤児になったきり丸に対し、自身も同じような過去を持っていることをほのめかしていた土井先生。子ども時代、家族や住む家を失うなんて相当つらい経験だと思うが、それを全く見せずに生徒のことをいつでも第一に考えてくれるからこそ人気があるのだろう。 今回の『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』は、土井先生がクローズアップされたストーリーが展開されている。映画館に出向き、子どものころの“初恋”を思い出してみてはいかがだろうか。
ジャッキー