「銀座に激安スーパーなんて」の前評判を覆した…銀座オーケーが「タワマン住人」以外に取り込んだ「意外な客層」
■「銀座=お金持ちばかり」ではない 高級感を放つ銀座でEDLPのスーパーというと違和感があるかもしれない。だが、近年は職住近接が当たり前となっており、勝鬨・晴海にもタワマンが多く建ち並んでいる。銀座から自転車で15分圏内に暮らす人口も多くなっているため、日常の買い物をする顧客も安定的な固定客になっているようだ。 少し離れた豊洲から車で来ている60代女性に話を聞くと、「品揃えも良く品質の高い肉が通常の3分の1で買える。毎日来ている」とのこと。また、オーケーから徒歩5分ほどの銀座3丁目に住む60代の主婦は、「売り場も広く相場に合わせた買いやすい値段の商品が品揃えされており、近所の人も便利になったと評判だ」と言っていた。 「銀座近くに住んでいる人」というと、年収が高く羽振りの良い人たちばかりが住んでいるイメージがあるが、実際はそうではない。再開発前から暮らしている高齢者もいれば、清水から飛び降りる覚悟でタワーマンションを購入し、普段は節約に勤しむ若いパワーカップルもいる。 ■「都心の買い物難民」を救っている 筆者も家庭の都合で銀座近くの浜松町に10年近く住んだことがある。平成の後半ぐらいまでの銀座地区は、家賃が高くいまほど職住近接が進んでいなかったこともあり、食品スーパーが極端に少なく、「買い物難民」が発生していた。庶民にとっては、安い価格で食品を買い物するところがほとんどなく、生活するのが大変だった思い出がある。主婦の方の話には大きく共感した。 今回の銀座店はまさにそうした都会の買い物難民を救う店舗になっているようだ。職住近接も進み、超高齢化の進む都心の顧客に対するEDLPのスーパーの第一歩目のフラッグシップになり得る。
■339円のかつ丼も、1万円超の塊肉もある オーケー銀座店は、近隣に勤務している人の買い物の味方にもなっているようだ。銀座地区はランチが1000~4000円とかなり高いので、「ロースかつ重(カナダ産三元豚使用)339円(税抜)」「本格ガパオライス398円(税抜)」といった多彩な弁当メニューは胃袋の満足と財布の優しさの二刀流で人気となっている。 他の店と差別化された、銀座らしい高級食材を使った商品も販売されている。店内を覗くと、富裕層に合わせたフルーツの盛り合わせや、1万円を優に超える塊肉も売られていた。数量限定の「黒毛和牛A5焼肉弁当759円(税抜)」などはコストパーフォマンスも良いため、品切れの場合も多くなっているという。 銀座の建築現場で働く北池袋在住の40代男性は「低価格スーパーが家の近くにないため、仕事帰りに立ち寄るようになった」という。「安かったので」と重いお米を買われていた。日常の食べ物を仕事帰りに銀座で買い、電車に乗って家に帰るという、ひと昔前では考えられなかった購買行動も生まれている。 ■冷凍食品コーナーは人がまばら 但し冷凍食品は遠方からの顧客も多いため、買い物を躊躇する顧客も多いようだ。筆者が店舗を視察した2度いずれも、買い物客でにぎわう生鮮食品エリアなどと比べ、冷凍食品エリアはお客はまばらに見えた。オーケーは「保冷剤・保冷バッグなどの関連購買を促し、お客さまが安心して買い物してもらえる工夫をしている」といい、エリア特性に合わせた試行錯誤をしているという。 また銀座という土地柄、飲食店の業務用の商品を買うお客も取材中多く見られた。 自転車で約10分ほどの距離にある八丁堀で和風バルを経営する60代の男性は、特にお酒が安いので頻繁に買い物に来るらしい。 オーケーに聞いてみると、業務用の売れ筋商品としては、国産黒毛和牛A5のブロック肉、キユーピーの「ごまドレッシングカロリー30%カット500ml(シーザー・和風たまねぎ)」、ダイショーの「焼き肉のたれ565g」、なとりの「業務用食塩無添加ミックスナッツ1000g」などがあるという。