【吉田美月喜】映画『カムイのうた』実在したアイヌの主人公に抜擢!「演じることへの責任を感じました。」と語る理由とは?
出演作が次々話題となり注目を集める女優・吉田美月喜さん。映画『カムイのうた』ではアイヌ民族が詠い継ぐ“ユーカㇻ”を日本語に訳し、19歳でこの世を去る主人公を演じます。役を通じて感じた、アイヌへの思いを伺いました。 【吉田美月喜】アイヌ語の独特な発音を学び、責任感を感じた
北海道ロケの息抜きに
じゃがいもを頰張ってました!
──吉田さん演じるアイヌの主人公・テルは、文字を持たないアイヌ民族の文化を初めて日本語に訳した役どころです。どのように役作りをされましたか。 アイヌ文化はもちろん、着物の着方やムックリ(アイヌの民族楽器)の演奏法も学びました。私が演じたテルは、実在した知里幸惠さんという方がモデルになっています。本で調べると知里さんは大人な印象だったので、撮影時の私と同じ歳の19歳で亡くなったとは信じられませんでした。でも北海道で彼女の記念館を訪れたとき、反抗期だったのか、ちょっとギスッとした内容の父親宛ての手紙を見つけたんです(笑)。そこで“私と同じような気持ちも持った子だ”と初めて共感でき、安心しました。 ──テルがアイヌ語でユーカㇻ(叙事詩)を語るシーンがありますね。アイヌ語の独特な発音は、どのように習得されたのですか。 北海道で実際にアイヌの方に指導していただきました。ユーカㇻは自由度が高くて、正解の音程やリズムはないそうなんです。だから“あくまで普通に物語を話すように”と、何度も口調を確認しながら教えていただきました。実は“こうして作品づくりに関わるのは、未だに勇気がいるんだよ”と話してくれた方もいます。アイヌだということを隠される方もいる中で、それでも指導することを選んでくださったのは、この映画を本気で一緒に作ろうと覚悟してくれたからだと思うんです。その気持ちが嬉しかったですし、改めてテルを演じることへの責任を感じました。
──テルを演じられた中で特に印象深いシーンはありますか。
いとこのモトに“差別されてまで学校に行きたいの?”と問いただす場面が心に残っています。テル自身もアイヌというだけで同級生から差別を受ける中、“認められなきゃいけない”という一心で誰より勉強した、やるせない気持ちがこの言葉に詰まっていると思います。学業優秀なテルは元々勉強が好きだったと思いますが、それ以上 に、学校に行くことでアイヌとして逃げられない戦いをしているんだと感じました。 ●よしだ みづき 2003年3月10日生まれ。東京都出身。2017年スカウトされ芸能界デビュー。世界中で大ヒットしたNetflixオリジナルドラマ『今際の国のアリス』やTBS日曜劇場『ドラゴン桜』、日本テレビ系ドラマ『ネメシス』など話題作に出演。昨年は映画『あつい胸さわぎ』、舞台『モグラが三千あつまって』で主演を務め、6月には舞台『デカローグ』(全10篇)のデカローグ7「ある告白に関する物語」で主演を務めることが決定している。 ●INFORMATION 『カムイのうた』 文字を持たないアイヌ民族の叙事詩“ユーカㇻ”を日本語に訳し『アイヌ神謡集』を書き上げた実在の人物・知里幸惠をモデルに描いた物語。和人(大和民族)による迫害を受けながらも、アイヌ民族の文化を日本語に訳すことを使命とし、弱冠19歳で亡くなってしまった主人公・テルを吉田美月喜が演じる。1月26日より全国順次公開予定。 ©シネボイス ------------ Photo:nara(vale.) Interview&Text:Koto Tonomura
講談社 ViVi